成功した経営者が、高級車や飛行機や馬を買う「もう1つの理由」

ビジネスの成功者の象徴と言えば、フェラーリやロールスロイスといった高級車、自家用のプライベートジェット、そして中央競馬の馬主といったところになるでしょうか(写真はHONDAの小型ジェットの紹介ページから引用)。

確かに、どれもそれなりの資産を持っていなければ、手に入れられるものではありません。そして、何だか成金趣味のお金持ち自慢のような、下品な趣味だと思う人もいるかもしれません。

しかし、これらの「富の象徴」を手に入れる人たちには、一般の人が考えるところとは別の「もう1つの理由」があることが多いのです。

それは「節税」です。

これらのラグジュアリーグッズには、短期間で減価償却できるという税法上のマジックが存在するのです。

減価償却とは、法定耐用年数と呼ばれる税務上の決められた年数で、資産を費用として計上できる会計上のルールです。

自動車の場合、法定対応年数は6年です。新車を買えば、6年間にわたり購入した金額を費用計上でき、節税に使うことができます。中古車になると更に短期にすることができます。

同じように、プライベートジェットの多くは小型飛行機に分類され、減価償却期間は5年です。

そして競走馬は、一定の条件を満たせば、1歳9ヶ月から4年で償却できるそうです(動物なのに償却するのは何だか不思議ですが・・・)。

例えば、1,000万円の新車の自動車を定率法で6年償却とすると、初年度の12ヵ月の減価償却の金額は333万円(償却率0.333)となります。つまり1000万円支払って新車を購入すると年間333万円を課税対象額から差し引くことができるのです。プライベートジェットや競走馬になると、更にその比率は高まります。

このように、減価償却期間の短い資産を保有して、毎年多額の費用計上をすることによって、合法的に税の圧縮ができるのです。

減価償却した資産の簿価は償却した分下がります。売却時には逆に多額の売却益が発生します。そこで、また更に大きな償却が取れる資産を購入する。そうすれば、また税の支払いを将来に繰り延べることができます。

車や飛行機や馬は、保有することで満足度が得られる憧れのラグジュアリーグッズです。しかし、自分の所有欲、あるいは自己顕示欲を満たしながら、同時に合法的に税金を圧縮できるメリットがあるのです。

一見派手に見える趣味のためのラグジュアリー資産購入も、実は税金を少しでも減らしたいという別の動機から保有しているかも知れません。お金持ちは浪費家のように見えて、意外にケチなのです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2022年1月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。