昨年12月30日、バイデンはプーチンと電話会談し、ウクライナ危機について話し合った。
プーチンは、NATOがウクライナを加盟させ中距離ミサイルを配備する事を国防上も威信上も何としても防ぎたい。そのためにウクライナ国境に兵力10万を展開している。
会談は継続協議となったものの、戦略的には正しいアフガン撤退で、大言壮語しつつ戦術的に最大の失態を演じた記憶も新しい素人集団のバイデン政権が、ボタンの掛け違いをする事も考えられる。
ロシアにはもう世界覇権を握れる力はないし、欧州はドイツを筆頭にエネルギー供給をロシアの天然ガスに頼っているにも関わらず、NATOがロシアを最大敵視し拡大を目指すのは奇妙な事である。
しかしながらそれを続けているのは、米国を中心に米ソ冷戦思考が抜け切れず、また軍産学複合体の中に米ソ冷戦の構図で喰っているプレイヤーが未だに生き延びているためである。取り分け冷戦頭が残っているバイデンは、その象徴である。
漸く、西側にとってまた世界にとっての最大の脅威はロシアではなく中国であるという厳然たる事実が浸透しつつあるが、まだ麻薬が抜け切れていない中毒患者のように、しばしばフラッシュバックを起こしている。
大悪魔と中悪魔を取り違え、中悪魔を大悪魔側に追いやり、挙句の果てに成立した大中悪魔同盟に怯えている構図は、外交軍事戦略上後世の笑いものになるレベルの愚かな事である。
インド・ロシア太平洋戦略:対中国覇権枠組拡大の必要性(参考拙稿)
さて太平洋側では、中国の習近平が2月の北京オリンピック後に台湾侵攻を行う事が警戒されており、ロシアと連携し、台湾・ウクライナ同時侵攻となる可能性も懸念されている。
習近平が毛沢東、鄧小平と肩を並べ歴史に名を残すためには、台湾侵攻、中国統一を成し遂げ国内求心力を高める事はほぼ必須条件であり、この危険な賭けに出る事は十分に考えられる。
そしてその時期は、北京オリンピック終了後から、習近平が総書記3期目続投に加え絶対的権力基盤を固める事が掛かる今年秋の共産党大会、そして事勿れ主義で本質的に親中のバイデン政権が議会多数を失う趨勢の11月の米中間選挙までの間が1つのチャンスだろう。
あるいは、プーチンにウクライナ侵攻を挙行させ西側の戦力と関心をロシアに引き付けつつ、台湾やアジア諸国、尖閣、沖縄への静かなる侵攻を倍速強化させ国際情勢を見極め次なるチャンスを狙うのかも知れない。
何れにしても、中露の実質同盟に楔を入れロシアを「インド太平洋戦略」に組み込まなければ、習近平の世界覇権の野望を成就され世界はウイグル化する可能性が高い。
日本は、中国にプライベートでも急所を握られている腰抜けバイデンの精一杯の打ち手である外交的ボイコットにも、漸く玉虫色ボイコットで追従しお茶を濁している有様だ。
だが、NATOとロシアを仲介出来るのは日本以外にはない。
道化役に終わる事を恐れる必要はない。たとえ成就せずとも、事後にも西側にパイプを持ちたいプーチンと、ロシアとの経済関係、エネルギー供給を念頭に米国のロシア敵視に半身の構えの欧州諸国に恩を売れるだろう。
その役には、習近平の戦略を絶対的に邪魔しない林外相等は論外で、岸田首相もよく見れば吉田松陰みたいな骨格をしているものの、クラゲの様に左右を漂い権力維持を図っている中では少なくとも表立っては動けない。
であれば、岸防衛相、あるいはプーチンと個人的に話が可能な森元首相、安倍元首相、場合によってはその波状攻撃で多角的にロシアと接触させ、ダメ元でNATO-ロシア間仲介を行うのは1つの選択である。
習近平の世界覇権の野望を果たさせぬよう、「国際的大義を伴う長期的国益の追及」を外交理念に掲げ日本は打てる手は全て打つべきである。