トヨタの脅威は「テスラよりソニー」

ソニーがEV(電気自動車)への参入を発表し、話題になっています。まだ、コンセプトカーを見本市で発表した段階ですが、個人的には大きな期待をしています。

ソニーという会社の強みは、異分野に参入して既存企業とは異なる価値を提供することで独自のポジションを確立できることです。

例えば、ソニー銀行、ソニー生命、ソニー損保のような金融グループは、本業のエレキの世界とは全くの別物です。参入当初は「あのソニーが金融?」とブランドイメージに違和感すら感じましたが、今やそれぞれの業界内で独自のマーケットを開拓しました。

今回のソニーのEVにも、従来の自動車メーカーにない発想があります。それは、既存メーカーとは真逆の価値の提供です。

トヨタをはじめとする既存自動車メーカーは、車を運転する喜びや楽しみを強調します。

「Be a driver」「Fun to drive」などの自動車会社のコピーには、車を運転するものと考え、その喜びを伝えたいというメッセージが込められています。

これに対し、ソニーは車内をエンターテイメントによって、快適な空間にすることを目指しています。

運転を楽しむのではなく、むしろ忘れてしまえるような空間を提供する。スポーツカーの発想ではなく、運転手付きのロールスロイスに乗るような感覚です。

また、今回のEVは、金融業への参入に比べれば遥かに違和感がありません。センサー技術や音響・映像といった分野はソニーの基幹技術であり、それらを活用できる強みを持っています。

テスラも異業種から参入し、市場から高い評価を受けていますが、今まで製造された車は、既存の自動車の価値の延長線上にあります。ソニーのEVは、車というものの存在価値を根本から変えるかもしれないという期待があります。

自前の技術をベースに斬新な価値観を組み合わせ、既存の自動車の概念を破壊する。革新的なソニーEVが市販車として発表されるのを、今からワクワクして待っています。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2022年1月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。