昨年のビッグニュースの1つは、眞子さま(現在は小室眞子さん)のご成婚でした。現在はニューヨークで夫の小室圭さんと一緒に暮らしていらっしゃいます。
筆者が住む英国では、小室夫妻と同様に米国に住むヘンリー英王子夫妻とが比較されることがありました。
そこで、「メディア展望」(12月号)で両夫妻について、考えてみました。
以下は、これに若干補足したものです。
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昨年10月26日、秋篠宮家の長女眞子さまが大学時代の同級生小室圭さんと結婚し、民間人「小室眞子」として新たな人生を歩み始めた。11月中旬、2人は新生活を開始するため、米ニューヨークに向けて飛び立った。
王室制度を持つ英国にいると、小室夫妻の姿にエリザベス女王の孫ヘンリー王子(サセックス公)とその妻で米国人のメーガン妃が重なって見える。小室夫妻もサセックス夫妻も心身に大きな負の影響を与えるほどの否定的な報道の嵐に見舞われ、新居を構える国として米国を選択した。
英保守系高級紙「デイリー・テレグラフ」のダニエレ・デメトリオウ記者が日英の夫婦を10月27日付の記事で比較しているので、紹介してみたい。
2018年の結婚から「メグジット」宣言へ
チャールズ英皇太子の次男ヘンリー王子と米国人の元女優メーガン・マークルさんがウィンザー城で結婚式を挙げたのは、2018年5月だった。世界中が2人の結婚を祝福し、夫妻の人気は頂点に達した。
しかし、2020年1月、王子夫妻は自分たちのインスタグラムのアカウントを使って、シニア王族としての公務を縮小させたいと宣言し、英国内に大きな衝撃が走った。
当初、夫妻は王族として受け取る公費をどうするのかについて言及せず、「公費をそのままもらいながら国民に奉仕する義務を減少させるのであれば、身勝手すぎる」という批判が出た。
また、女王は事前に決断について知らされず、一般国民と同様にインスタグラムを通して夫妻の意思を通知された。これをもって、保守系メディアのあるコラムニストは「女王に対する侮辱」と評した。
大衆紙サンはメーガン妃の名前と英国の欧州連合からの離脱を意味する「ブレグジット」をもじって、夫妻の事実上の王室離脱を「メグジット」と呼んだ。
「人種差別的」発言をされた、とテレビで暴露
昨年3月、王子夫妻は米国で最も著名な司会者の一人オプラ・ウィンフリーのインタビュー番組に出演した。この中で、ヘンリー王子は公務を引退した2020年春から「王室の経済支援が停止した」と内情を暴露。
一方、メーガン妃は「王族のある人物」が一人息子アーチー君の肌の色に懸念を見せたと述べて、王室が人種差別的であることを示唆した。メーガン妃は白人米国人の父とアフリカ系米国人の母との間に生まれている。
現在までに、王子夫妻は女王との「家族会議」を経て、公務から一切身を引いた状態となった。
今は家族で米国に住み、スポティファイやネットフリックスなどと巨額の契約を交わし、セレブリティ(有名人)としての生活を送っている。
「お金を稼ぐことに慣れている」英王室
デメトリオウ記者の記事の中で、米ポートランド・ステート大学のケン・ルオフ教授はこう述べている。
英王室のメンバーは「お金を稼ぐことに慣れている。どうすれば一番稼げるかを知っている」。その最たる例がヘンリー王子夫妻だという。
一方、「小室夫妻がヘンリー王子夫妻のようにお金のために皇室の内情暴露をすることはない。可能性はゼロだ」。小室夫妻が望むのはヘンリー王子夫妻とは逆で、公による監視状態から抜け出すことにあるという。
セレブリティとして生きるヘンリー王子夫妻とひっそりと生活することを望む小室夫妻は、正反対の生き方を選んだと言えよう。
デメトリオウ記者は、日本社会が「幾重にも重なりあう、複雑でしばしば暗黙の規則によって成立している。皇室の場合はその傾向が特に強まる」と説明する。
小室さんはその規則を破った人物と見なされ、「庶民」が皇族と結婚するのは「お金や名声を得るために違いない」と報道された。伝統的な無地の黒あるいは紺色のスーツではなくピンストライプのスーツを着ていたがために、「宮内庁関係者に嘲笑された」と指摘する。
階級制の名残がある英国だが、王族が上流階級ではない人と結婚しても嘲笑の対象にはならなくなった。
2011年、ヘンリー王子の兄ウィリアム王子が王族でも貴族でもないケイト・ミドルトンさんと結婚した時点では、中流階級であるミドルトン家を下に見る報道があったが、2017年、ヘンリー王子がメーガンさんとの婚約を発表する頃には結婚相手が庶民であることは問題視されなくなっていたという。
小室夫妻自身はヘンリー王子夫妻と比較されることをどう思っているのだろうか。
結婚記者会見の際に報道機関から寄せられた書面での質問に対し、眞子さんはこう回答している。「比較されていることについては、思うことは特にありません」。インタビュー取材に応じるつもりはなく、「新しい環境で心穏やかに生活を送りたいと考えています」。
恋愛結婚を成就した眞子さん
世論調査会社「ユーガブ」によると、先のウィンフリーの番組出演直後、英国ではヘンリー王子とメーガン妃に対し否定的な見方をする人の割合が急増した。
しかし、米国では王子夫妻、特にメーガン妃に対する好感度が高い。「し烈なメディア報道や伝統を重んじる英王室のくびきから離れ、生まれた国に戻ってきたメーガン妃」、という解釈がある。王子夫妻の友人のテニス選手セリーナ・ウィリアムズ、映画監督マイケル・ムーア、元国務長官ヒラリー・クリントンなど、多くの政治家や芸能人らがメーガン支持を次々と表明した。
一般人との結婚によって皇族ではなくなった眞子さんを、英メディアは一人の女性としてどのように評価しているのか。
経済高級紙フィナンシャル・タイムズはプロフィール記事(10月30日付)に、「マコ・コムロ、ひっそりと、大胆に恋愛結婚を成就させた元プリンセス」とする見出しを付けた。
「最終的に眞子さんは、私立大学で恋に落ちた働き者で有望な弁護士との愛情あふれる、皇族の式典なしの結婚を実現させた」。
そして、波乱万丈を乗り越え、会見で声明文を読んだ眞子さんは「大胆かつ自立した口調を披露した」。「小室さんが米国に留学したのは自分がそうお願いしたからだと説明し、2人の結婚は『自分たちの心を大切に守りながら生きていくために必要な選択でした』と述べた」。その「メッセージは驚くほど率直だった」。
フィナンシャル・タイムズは眞子さんに芯の強さを感じ取ったようである。
筆者は結婚記者会見の様子を動画で視聴した。
小室夫妻は準備した文書を読み上げながら、静かに淡々とこれまでの経緯と自分たちの心情を語っていた。著名司会者の番組で王室の内情を暴露したヘンリー王子夫妻とは正反対の姿だった。
編集部より:この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2022年1月24日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。