テレビ局に付き合っても良いことなし

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さて、先日名古屋テレビから連絡があって、不正車検問題についてコメントして欲しいとのこと。検索して筆者が日経ビジネス電子版に書いた記事を見つけての連絡らしい。

まあこの記事を踏まえてのことなら、良いかなと思ってZoomでの取材に応じた。打ち合わせで30分以上、収録でも同じくらいしゃべった。

作業時間に関する問題。売上至上主義に陥りがちになるマネジメント。顧客にNOと言えない体制。そもそもの制度項目がきちんとアップデートされていないという監督官庁の問題まで、結構多岐に渡ってしゃべったのだが、冒頭のアイスブレークみたいな「整備士不足は何故起きているのですか?」という本筋とほぼ関係ない部分だけが使われた。

まあ、率直に言って大変残念である。取材時の質問と完成した番組は最早別物と言って良い。

で、当然「こんなクソ下らないコメントしやがって」というtweetが今日になって増えている。ごもっとも。出来上がった番組だけ見たらそりゃそうなる。おっしゃる通り。結局番組の決裁権を持つ人間がその程度の認識しかなければ、何をしゃべっても猫に小判。理解できないのだから重要で、本質的な部分は絶対に使われることはない。初見の人間が斜めに聞いても簡単にわかる部分だけが使われる。そもそも車検の問題に興味がないのである。

ということで、今回の件をしっかり反省して、今後はテレビ局、もしくは制作会社に編集権を100%渡す取材は受けないことにする。

元々「報道だから」という理由で謝礼もギャラもなく、そこでせめて意見だけでも尊重してくれるならばともかく、全発言の中でもっともどうでも良いところを切り出して「専門家はこう言っている」と全責任をこっちに被せられてまでやる意味は全く無い。勉強代である。

まあ、反省は必須だ。テレビ屋なんてそんなもんということをお前は全く知らなかったのかと言えば「知ってたよねぇ」としか言えない。なので結果は筆者の不徳である。

テレビ屋は裏切る。そういう生き物だということをはっきり証明したのは彼らである。なので二度と信用はしない。


編集部より:この記事は自動車経済評論家の池田直渡氏のnote 2021年1月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は池田直渡氏のnoteをご覧ください。