未成年皇族をめぐる週刊誌報道を叱る宮内庁の未熟

「いかがなものか」は的外れ

秋篠宮の長男、悠仁さまの高校進学先について、週刊誌報道が騒がしく、宮内庁が苦言を呈する見解を公表しました。

悠仁さまは現在、お茶の水付属中3年です。伝統的な進学先の学習院ではなく、提携関係にある筑波大付属高校に進まれるのではないかとの週刊誌報道がしきりです。

秋篠宮家 宮内庁HPより

宮内庁は「受験期を迎えている未成年の進学のことを憶測に基づいて、毎週のように報道するのはメディアの姿勢として、いかがなものか」と。新聞広告やネットで自分の進学問題の報道を知らされるでしょうから、悠仁さまは落ち着いていられません。

一般の未成年に対しては、あり得ないことです。「皇族報道には公益性がある。将来の天皇の可能性もある人物だから」にしても、度が過ぎています。週刊誌は「売れればいい」の編集方針です。幼すぎる。

海外事情に詳しい知人が「英国では、皇族が話題になるのは、成人から」というコメントをネットに投稿していました。遠慮なく皇室問題を取り上げる英国でも「話題にするのは成人から」という節度があるとか。

例外はあるにせよ、節度は大切です。宮内庁もそうした問題提起をしてみないのか。皇室典範によると、皇族が「成年」に達するのは、男子18歳、女子20歳です。宮内庁はなぜ、「未成年皇族に対する報道には、おのずから節度が必要」と、大きな視点を示さないのか。

「愛子さまが初の公務、新年祝賀会の儀。外国大使らにご挨拶」(昨年12月)という報道がありました。成人に達して以降は、公務を担われようになり、いろいろな角度からの報道がなされることは自然の流れでしょう。

英国流に「話題にしない」といっても、節目節目では当然、皇族の公益性を考えると、報道があっても当然です。愛子さまの学習院小入学の際は、両陛下とおそろいでの記念写真が報道されました。

それにしても、成年皇族と未成年皇に対する報道には、線引きがあってしかるべきです。特に高校進学のように、敏感なお歳頃の場合は、配慮が必要です。「学習院を選ばないかもしれない」を毎週、どこかの週刊誌が報道するほどの公益性があるとは思えません。

日本雑誌協会は昭38年(改定版)に「雑誌編集倫理綱領」を定め、「編集倫理の向上を図る」として、言論・報道の自由、人権と名誉の尊重、法の尊重、品位などを誓ってきました。

人権と名誉の尊重では「真実を正確に伝え、取り上げられた人の名誉やプライバシーをみだりに損なうような内容であってはならない」、法の尊重では「未成年者の扱いは十分に慎重でなければならない」と。

今回の悠仁さま報道は、「プライバシーをみだりに損わない」、「未成年の扱いは慎重にする」という雑誌協会の誓いに抵触するのではないか。宮内庁には、そうした指摘をしてもらいたかった。一般国民と皇族の法的地位は同じでない(憲法、皇室典範)にしろ、週刊誌には節度がほしい。

さらに、宮内庁が週刊誌を相手に注文をつけるのも幼い。発行元の出版社の経営トップに問題を提起すべきなのです。週刊誌の編集長は、売れ行き不振なら交代ですから、社会的倫理などは後回しです。

週刊文春(文芸春秋社、64万部)、週刊新潮(新潮社、43万部)、女性セブン(小学館、35万部)、女性自身(光文社、35万部)、週刊女性(主婦と生活社、20万部)は、れっきとした出版社が発行しています。

書籍部門では、文化性、公共性、社会性のある出版物も多いのに、週刊誌となると、一転します。スキャンダル、プライバシーの侵害、名誉棄損、不確かな情報に基づく「売らんかな」の記事が少なくありません。日本の出版界は歪な構造をしています。

責任を問うならば、多くが編集出身者である経営トップを相手にすべきなのです。宮内庁は認識を改めるべきです。

皇族の担い手がどんどん減り、天皇の候補も数えるほどになり、社会の関心は少数の皇族に集中しています。対象者が多ければ、そんなことにはなっていないはずです。

そうした皇族の持続可能性に展望が開けていないから、悠仁さま、昨年までの眞子さまに過剰な報道がなされる。宮内庁にもその大きな責任があるはずです。そうした結果への責任をもっと感じ取ってほしい。

最後に、新聞広告のあり方です。社説では社会正義、倫理を強く説いているのに、新聞広告となると、一転します。多くの読者は週刊誌でなく、新聞広告の見出しをみるだけでしょう。皇族もそうかもしれない。

広告関係の団体が組織する広告主協会は、広告倫理と自主規制について、綱領を定めています。「虚偽、誇大、不当表示があってはならない。信用や品位を損なってはならない。公序良俗に反してはならない」、「広告は真実を伝え、品位を保つことで社会の信頼を得る」と。

出版社、新聞社も会員です。週刊誌の「売らんかな報道」を支えているのが新聞広告です。宮内庁は新聞広告についても、発言すべきでした。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2022年1月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。