日本の景気に春が来る

日本企業の10-12月決算発表が本格化しています。ここまでの流れを見ていると正直、強いと申し上げます。業種によってその辿る道は違いますが、今まで苦しんだ企業はトンネルの出口が見えてきています。また「不足」を理由に絶好調となっていた業界は更に上伸しているようです。これは日本経済復活ののろしなのでしょうか?

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苦しんだ航空業界ではANAが8期ぶりの営業黒字、JALも純損失が事前予想の376億円から233億円になり、期待を持たせる結果となっています。消費関連では三越伊勢丹が2年ぶりの黒字となりました。オミクロンで1-3月は航空、消費関連ともそこまで伸びはないかもしれませんが、足腰はしっかりしてきているので春以降の更なる回復が期待される状況です。

総合商社、海運は絶好調と言ってよいでしょう。商社は3月末決算見込みの上方修正が相次いでいるのは資源価格の上昇に拠るところ。海運も運賃上昇の波にのったわけですが、これはいつまでも続くわけではないのでその点は浮かれすぎない方が良いでしょう。

ソニーは3月末見通し営業利益を1兆2000億円とさらに上方修正しましたが、内容は映画が当初予想より利益が倍増したことが大きかったものの最大の利益源であるゲーム部門はPS5が半導体不足で十分作れていない点で頭を押さえており、22年も同様となれば販管費の抑制で利益が上伸した部分は剥がれるとみた方がいいでしょう。同様に任天堂も手放しになれず、ゲーム機依存型のビジネスモデルがどう転換するか、注視する必要があります。

銀行は堅調のようで三菱UFJは利益1兆円を7年ぶりに越えそうです。思い出せばその頃だったか、同行トップが日経ビジネスのインタビューで「利益が1兆円も出たら、ねたまれるからあまりそこは超えたくない」という日本的で奇妙な発言をしたのが印象に残っています。私はいくらでも儲けてもらっていいと思います。2兆でも3兆でも構わない、むしろそれで法人税を払って頂ければ日本全体に血液が廻るわけで三菱グループの総本山がそんな遠慮しては日本経済の復活はありません。なので、今回、回復軌道にのり、よかったと思っています。

年初、ゴールドマンサックスの今年の株価予想で日本株は買いとなっていました。理由はアメリカ株が高すぎる一方、日本株が安すぎるという点です。日本だけで暮らしていると案外見えないものですが、海外の物価は先進国も新興国もコンスタントに高くなっており、積年のギャップが大きく出てしまったのが今日の状況です。

例えば都市部のマンション価格がバブル時越えになったとされますが、私は不動産の利回りがまだ期待できる日本の物件に世界の触手が伸びているのだと理解しています。かつて、東京オリンピックが終わったら日本はもう将来の夢も希望もなく消費をしない高齢者ばかりだ、という姥捨て山的で猛烈な悲観論も存在したのを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。オリンピックを二度も見られるなんて冥途の土産なんていう方もいらっしゃったのです。そこまで閉塞感があったのですが、ここにきて少し明るくなりそうな気配です。

理由は何でしょうか?私は逆説的ですが、企業が値上げできる自由を取り戻したからだと思っています。2月から4月にかけて様々な製品は5-20%価格上昇します。飲食店の価格も更新されるかもしれません。「センベロ」が「ニセンベロ」になるかもしれません。もちろん、一部の方には厳しい影響になりますが、社会全体としてはこれで廻るようになります。

いままで企業は価格改定ができなくて人件費を削り、「ここは我慢をしてくれ」と言い続けました。しかし、企業努力ではどうにもならなくなり皆で一斉に上げ始めると日本人の特性として「うちも」「弊社も」という流れになります。また既存製品の値上げが微々たるものでも新製品は現在価格に合わせた高価格の商品が投入されるでしょう。そうすると消費者に慣れが生じます。

賃金が上がり、企業業績が上がり、株価が上がれば世の中にお金が廻るのです。日銀は低金利でお金を世の中に廻すと言い続けましたが、その恩恵を受ける人以上にマイナスの影響もあった点を誰も指摘しません。いつまでも地に這いつくばった金利水準ではなく「上げる」ことを考えざるを得なくなります。事実、日銀内ではその検討をしたようだと一部で報じられています。

もしもこの循環が生まれるなら日本に本当の春がやってきます。日本は外圧に弱い国で、内弁慶であります。今回の価格上昇も原油を含めた原材料の輸入物価の上昇という外圧でしたが、それで閉塞感がクリアになるのであれば結構なことです。目覚め、立ち上がり、乗り越えるという気持ちを持ち始めるとできないことはない、と思うようになるでしょう。

株価もきっとそれを暗示するような展開になるような気がします。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年2月4日の記事より転載させていただきました。