黒坂岳央(くろさか たけを)です。
最近「海外移住」「日本離れ」というキーワードがあちこちで見られるようになった。筆者は英語を教えている立場なのだが、英語学習をする動機の一つに「日本の未来に希望を持っておらず、海外で生活をしたいから」という人は一人二人ではない。
このテーマについては、人によって価値観や意見は様々だ。本稿についても「自分の意見こそが正しい!」というつもりはまったくない。あくまで筆者の独断と偏見に過ぎない点を踏まえて、イチ意見として参考に聞いてもらえると幸いだ。
「日本はウェット、海外はドライ」は本当か?
人間関係において、日本はウェットな関係だが、海外はドライで気楽だというものがある。本当だろうか?次のツイートを見てほしい。
これはよく理解できるつもりだ。筆者は過去に米国の大学に留学し、帰国後は都内の複数の外資系企業で外国人と一緒に仕事をしてきた経験がある。
自分は「海外移住歴数十年」というベテランほどの経験はないが、これが少しは肌感覚で分かるつもりでいる。海外は必ずしもドライで気楽な関係とは限らないと思っている。外資系企業で働いていた時は、上司へのあからさまなヨイショなどのゴマすり場面は、日本企業以上に見てきた(会うたびにネクタイを大げさに褒める等)。
週末になると、飲み会の代わりにオフィスでは頻繁にピザ立食パーティーなどが開催され、自分はしょっちゅうピザやハンバーガーを発注する役割を担当した。パーティーといっても、酔ってだらしない姿などは絶対に見せられない。参加者はみんな笑顔だが、実際には人事評価を意識するビジネスの性質を帯びた場だった。
また、我が子をインターナショナルスクールに通わせる人物の話では「交流パーティーがあるたびに親の参加が求められて負担」とこぼしていた。
あくまで筆者の狭い見識だけでいえば、海外の人間関係が必ずしもドライとは思えないのである。
「日本は窮屈、海外は自由」は本当なのか?
海外移住を勧める人たちによる主張の一つに「日本はひと目を気にする必要があるし嫉妬が面倒で窮屈、一方海外は自由で気楽」というものを見ることがある。
確かに日本の有名人で顔を知られている人だと、これは当てはまるだろう。有名YouTuberなどはストーカー被害にあったり、外出のたびに声をかけられる。これはとても窮屈だろう。だが海外に行けば自分を知るものはいないので気楽、という理論はよく分かる。
だが、世の中の99%の人は有名人ではない。投資家やフリーランス、起業した経営者なら、自分を縛る相手は誰もいないのだから、事情は日本でも海外でも変わらないのではないだろうか。実際、筆者は起業してから日本での今の生活に窮屈さを感じることはまったくなく、自由だと感じている。わざわざ自慢をしなければ、相手からムダな嫉妬を買うこともない。静かに生活をすればいいのだ。
海外に行かなくても日本で稼げばいい
そして今はリモワ全盛期である。わざわざ海外に行かずとも、日本で生活をしながら海外の仕事をこなして収入を得ればいいのである。
筆者は実際そうしている。現在は熊本県の山に静かに生活をしているが、部屋の中では毎日大量の英語が飛び交っている。最近は海外企業からの仕事をこなすようになり、日々、米国、マレーシア、シンガポールの企業とビデオ通話やEメールなどでコミュニケーションを取りながら仕事をしている。昔は翻訳の仕事ばかりだったがが、最近では広告や動画関係の仕事も来る。
インターネットにつながる環境で、英語とビジネススキルがあれば、場所にこだわらずどこでも仕事はできる時代だ。自分は今後も日本から離れるつもりはなく、海外から収入を得る力をさらに磨きたいと思っている。
お断りしておくと筆者は、自慢など稚拙な真似をしているつもりはまったくない。英語力とビジネススキルを持っている日本人なら、後は行動力があれば筆者がやっている程度のことは誰でもできると思っているからだ。
筆者は類まれなる特殊スキルを持っているわけではない。英語力も決して人並み外れて高いわけではない。ただ「日本で海外から収入を得る」という意思を持って行動した結果に過ぎないのだ。
世界トップクラスの生活レベルは捨てられない
日本の生活は合わない人もいるし、その逆の人もいる。結論的には人それぞれだが、筆者は日本の生活が気に入っていて、海外で住みたいとは思っていない。
日本は食事がおいしく、物やサービスは安い。どこにいっても清潔で子供がいても誘拐される心配をする必要もない。お店の接客は親切で丁寧だ。
だが今の日本で得ている環境と同等レベルを海外で望むなら、多くの場合は割高になるか、現在享受しているメリットの何かを妥協しなければいけない可能性は否定できない。日本は地震が不安ではあるが、他国でも他の災害や犯罪に巻き込まれる可能性もあるわけで、その手の不安はどこで生活をしていても完全にゼロにすることは出来ないだろう。
何かと「海外移住」が叫ばれるので、本稿を通じて新たな視点を提供できればと思っている。
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