日経が今になってこんな記事を多数書くようになりました。
生活関連、物価高の波 燃料高騰・円安で 持続性・賃上げ見通せず 家計に負担重く
エネルギー価格の高騰や円安を受けた値上げが食料品・外食などに広がってきた。生鮮食品を含む消費者物価指数(CPI)の上昇率は携帯電話料金の値下げの影響を除くと2%に迫る。生活必需品など身の回りのモノやサービスの値上げも目につき始めた。ただ賃金上昇を伴った持続的な物価上昇につながるかは、まだ見通せない。
円安も輸入価格上昇を通じて物価を押し上げる。1月以降、コスト増を価格転嫁する食品大手が目立つ。CPIでもマヨネーズ12.9%、調理カレー12.3%、マーガリン11.2%など大幅上昇が相次いだ。
エネルギー高騰、円安と並ぶ3つ目の物価高要因が半導体不足や物流網の停滞など供給制約だ。メーカーが思うように部品などを調達できず、物価を押し上げる。
米国は1月の雇用統計で平均時給が前年同月比5.7%増えたが、日本は12月の名目賃金はほぼ横ばいと低迷する。「米欧のように深刻な人手不足には至っておらず、賃金上昇の兆しは見られない」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)
一時的に価格上昇しても消費者の購買力が高まらなければ消費を冷ますだけで、持続的な物価上昇につながらない。企業も価格転嫁に慎重にならざるをえない。
経済の安定成長につながる持続的な物価上昇には需要拡大が物価を押し上げる好循環も欠かせない。しかし日本は需要が潜在的な供給力を下回る「需給ギャップ」が21年7~9月期に27兆円程度(年率換算)に達した。
アベノミクスと黒田日銀は円安を誘導して物価をあげる努力をしてきました。
物価が上がれば、国民は先になればもっと物価があがると思って先を争ってものを買うので景気がよくなると。
そうすれば株価が上がるからです。そして輸出企業が儲かると。であればトリクルダウンで広く国民が恩恵を受けると。
それを日経はじめ多くの経済メディアや記者クラブメディアは批判しなった。
ところが上がったのは株価と物価だけでした。
円安になっても主要企業は生産拠点を海外に移しているから、さほどの影響はありません。むしろ国内向け製品は「輸入」となるから値段があがるか、利益を減らさざるをえない。
円換算での利益が増えただけで終わりました。企業もそれが実力ではないと知っているから、内部留保で溜め込むだけでした。
そして安倍政権は株価対策もあって企業に株主への配当を増やせと圧力をかけました。従来であれば社員の給料を増やす資金をアメリカの猿真似をして投資家にばらまいたわけです。これで給料が上がるはずもない。
そしてGDPの55~60%を占める個人消費は円安誘導のための物価上昇で打撃を受けました。輸入、流通、小売業などではそのコストを直接消費者に転嫁できないので、自分たちの利益を減らさないといけない。これでは賃上げなどできません。
インフレになれば景気が良くなるというのは嘘だと今になって日経は騒ぎはじめました。
そんなとは安倍晋三が総理就任前からわかっていた話です。
今がまさに物価上昇であり、アベノミクスと黒田日銀が正しいのであれば日本の黄金の反映期が始まるはずです。ところが岸田政権はガソリンに補助金をだすと正反対のことをいっている。
以前から繰り返し申し上げておりますが、円安誘導で輸出は増えないし、淘汰されるべき企業が生き残るだけです。
既にGDPの2倍以上、地方入れれば1600兆円の赤字の国になってしまいました。
これはバブル後の経済立て直しと称してばらまきを続けてきたからです。ばらまいたがそれが全く機能しなかった結果です。
にもかかわらず、日本は緊縮財政だ、もっとばらまけと言う人がいますが気が狂っているとしか思えない。
既に国家予算の三分の一が借金であり、四分の一が国債費です。だから消費税も導入されたし、社会保障費の負担も増えました。国民負担率は48%になりました。
こうしないと国が回りません。ところが政府は消費税の税収があるからと企業、特に大企業に減税をしてきたわけです。さて金利が上昇したら、どうするのでしょうか。今の定期林が2倍になっただけで、国家予算の半分が国債費になってしまいます。更に借金を重ねれば、円は益々さがり、輸入品はますます高くなって生活を圧迫します。
つまり今後も我々の税負担と社会保障費負担は増え続けるでしょう。つまりは可処分所得が減るわけです。それでインフレになれば更に実質可処分所得がへります。それで先を争って消費をするでしょうか。むしろ買い控えが増えるでしょう。
それを回避するならば円高に誘導して物価上昇を低減されることですが、そのためには利上げをしないといけない。そうすると国の謝金返済が益々大変になるという隘路に陥るでしょう。
株価さえ上がれば景気がよくなるという株屋と結託したアメリカメディアの後追をしてきた、日経その他の日本のメディアの罪は大変大きいものがあります。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2022年2月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。