日本人の意思決定が遅いのは、教育のせい

世界が新型コロナウィルスの規制を撤廃する方向に動く中、日本だけ別方向の対応をしているように見えます。

岸田政権も少しずつ、緩和に向けて動き出しているようですが、他国に比べればそのスピード感は随分と緩慢です。

現政権に限らず、日本人が意思決定をするのに時間がかかりがちなのには理由があります。

まず、自分だけ独自の行動をして周囲と軋轢を起こすことを恐れる人が多いことです。

例えば、居酒屋に入ると全員が同じビールを注文して一緒に飲み始める。そんな横並び意識が極めて強く、同調圧力が非常に強いという特徴があります。

また、失敗をすることを極度に恐れる傾向があります。

新しいことをやって、失敗するよりは、前例主義で前にやった通りに無難に物事をこなしていったほうがメリットがある。このような考えが、失敗を恐れずチャレンジしようと言うマインドをつぶしてしまっています。

さらに、物事を決めるのにコンセンサスを重視する傾向もあります。トップダウンで決めるのではなく「聞く力」によって議論を尽くしてから、最終結論を決める。これは岸田首相に限りません。

このように、人と同じことをして、リスクをとらず、みんなで相談するという意思決定プロセスでは、時間がかかり、従来の方針を転換するのに長い時間がかかってしまいます。

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このような日本人の行動特性は、学校教育によって醸成されたものだと思います。

均一で従順な人材を金太郎飴のように育成し、ミスを許さず減点評価を行う教育方針が、このような国民性を作り出してしまったのです。

人と違うことをすることを奨励し、リスクを取ることを褒めたたえ、自分で迅速に意思決定できるリーダーを育てる。残念ながら、そのような教育は、今の日本では期待できません。

新型コロナウィルスへの対応に関して、海外では次のステージに入っているにもかかわらず、日本は、意思決定の遅さから周回遅れで後追いをしていく。

後手後手の対応は、日本経済の体力をさらに奪い、海外との経済格差を広げていくことになります。

にも関わらず、多くの国民は相変わらず、新規陽性者数ばかり発表するメディア報道を見ながら、慎重な新型コロナ対策の継続を望んでいるようです。

この意思決定の遅さが将来の日本の致命傷になるのではないかと、本当に心配しています。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2022年2月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。