共産党の志位委員長のツイートが炎上している。6700件以上の引用RTというのは、この手のツイートとしては新記録だろう。
憲法9条をウクライナ問題と関係させて論ずるならば、仮にプーチン氏のようなリーダーが選ばれても、他国への侵略ができないようにするための条項が、憲法9条なのです。
— 志位和夫 (@shiikazuo) February 24, 2022
一見バカバカしいことを言っているようだが、これは意外に正しい。日本国憲法第9条は他国を侵略しないという約束であり、他国からの侵略を防ぐ規定ではない。日本は自衛権を放棄したからだ。これは1946年の帝国議会で、吉田茂首相が明確に答弁した。
吉田茂:近年の戦争は多くは国家防衛の名に於て行なわれることは顕著なる事実であります。故に正当防衛権を認むることが偶々戦争を誘発する所以であると思うのであります。又交戦権抛棄に関する草案の条項の期する所は、国際平和団体の樹立にあるのであります。
憲法には「自国への侵略を防ぐ条項」がない
それに対して共産党の野坂参三はこう批判した。
野坂参三:二つの性質の戦争がある。一つは正しくない不正の戦争である。是は日本の帝国主義者が満州事変以降起こしたあの戦争、他国征服、侵略の戦争である。同時に侵略された国が自由を護る為の戦争は、我々は正しい戦争と云って差し支えないと思う。
此の憲法草案は戦争一般の抛棄と云う形でなしに、侵略戦争の抛棄、斯うするのがもっと的確ではないか。
こうのべて共産党は戦力や交戦権を放棄する第9条の規定を批判し、政府案に反対した。この批判はソ連の意を受けて日本の再軍備をねらったものともいわれるが、法的には正しい。このとき憲法に「戦力の保持」が明記されていれば、その後の憲法改正をめぐる混乱はなかった。
志位氏のツイートは、このときの野坂の解釈と同じである。違うのは憲法に自国への侵略ができないようにするための条項が存在しないという欠陥にふれていないことだ。
第9条はGHQが日本を軍事的に無力化するために仕掛けた罠であり、占領が終わったら日本政府が改正するものとマッカーサーは考えていた。しかし色々な行き違いで改正できず、その代わり日米同盟とアメリカの核の傘が日本の自衛力になった。
戦争を防ぐのは個別的自衛権ではなく日米同盟
ウクライナの状況をみると、現代では個別的自衛権は大した意味をもたず、軍事同盟と核戦力がほとんどすべてである。ウクライナが侵略されたのは、まさにNATOに入ろうとしたからだった。
もしウクライナがNATOに入っていたら、攻撃されたときはNATO加盟国は即座に反撃しなければならない。それは戦術核を含む戦争に発展するリスクがある。プーチンはそれを知っているので、今の段階で侵略したのだろう。
彼の予想通り、NATO諸国は「経済制裁」しかできない。このままウクライナに傀儡政権をつくれば、既成事実になるだろう。気の毒だが、ウクライナの軍事力では対抗できない。
この点で、プーチンの判断は合理的である。志位氏は上のツイートの続きを書いていないが、こう書くべきだろう。
ロシアでプーチン氏のようなリーダーが選ばれても、日本への侵略ができないようにするための軍事同盟が日米安保条約です。それに反対する共産党の政策は、実は他国から侵略しやすくする政策なのです。