花王とオーケー。値上対応の本気度はどちらが高いか

関谷 信之

スーパーのオーケー(オーケー株式会社 以下オーケー)が、花王(花王株式会社 以下花王)製品の取り扱いを一部中止しました。

オーケー、花王の145品販売中止 「商品見直しの一環」|日本経済新聞

オーケー、花王の145品販売中止
首都圏地盤の食品スーパー大手のオーケー(横浜市)は16日、オーケーが取り扱う花王の商品の約500品目のうち3割に当たる145品目の取り扱いを1月31日から中止していると発表した。花王との取引の条件交渉も含めた商品見直しの一環としている。オーケーは花王商品の取り扱い中止について、売り上げが鈍いことなども理由にあげている。...

この報道に対し、最も多かったコメントは

「他のメーカーのものを買えばいいんじゃないの?」

というもの。しかし、なかなかそうもいかないのです。

花王の扱う、アタック・ビオレ・マジックリンなどの日用品は、他社へ乗り換えしづらいものだからです。

花王プレスリリースより

「いつもよりシャツの匂いが強い」「お風呂上りに背中がかゆい」

こういったことは避けたい。だから、使い慣れたものを買う。実は、これが日用品を選ぶ理由のトップでもあります。

洗濯用洗剤ブランドの使用意向理由について、アタック、アリエール、トップを比較すると、3ブランドともに「使い慣れている/ずっと使っているから」が1位の理由となりました。

最新 洗濯用洗剤の利用率ランキング!3位は「ワイドハイター」、2位は「アリエール」、1位は?|スパコロのプレスリリース

これら日用品で花王はトップシェアです。花王製品が無いと、「オーケーでは食品だけ買って、洗剤はドラッグストアに行くか」と、他店に流れてしまう。客単価低下。売上低下。シェアが大きいだけに、影響は小さくありません。

では、なぜオーケーは「花王製品販売中止」を宣言したのか。そして、なぜ花王は「値上げ宣言」せざるを得なかったのか。考察します。

花王「値上げ訴え」の本気度

なぜ、最初に値上げを訴えたのが「花王」だったのか。理由は、花王の高い危機察知能力にあります。

花王の管理会計には定評があります。1962年に、管理会計に必須の「直接原価計算」を導入。材料費など変動費の発生状況を早い段階で把握し、実績値と計画値を詳細に差異分析し、分析結果を踏まえ、将来の収益を予測しています。分析・予測精度とも、とても高い。

つまり、花王は「危機察知能力」が、他社以上に高い、と言えます。

その花王が、来期(2022年度)の材料費高騰による利益影響を「▲110億円」と予測しました。粗利益率(売上総利益率)に置き換えると、0.77%の悪化です。2.35%悪化した前期(2021年度)から、さらに悪化する可能性が高い。

花王粗利益率推移
決算値より筆者作成(2022年度は推測値)

危機感を高めるのは当然でしょう。今回の「値上げ宣言」の本気度は、相当高いはずです。

「昨今の原料高は(今までと)次元が異なる。日用品メーカー最大手の花王がリーダーシップをとらなければ値上げは前に進まない。必ず値上げをやっていく」

オーケーと対決、花王「値上げ宣言」で広がる茨道 | 東洋経済オンライン

オーケー「花王製品販売中止」の本気度

対して、オーケーの「花王製品販売中止」の本気度は、あまり高くありません。

筆者撮影

筆者の近隣のオーケーでは、アタック・ビオレ・バスマジックリンなどの花王の主力製品は、今も販売されています(2022年2月23日現在)。確かに、詰め替えなどは大きめのサイズだけ。香りも1種類だけ、などアイテムは絞り込んでいます。しかし、ニュービーズなど安価な花王製品は全ての香り(2種)を揃えています。今回の花王製品販売中止は取扱商品中3割程度、とのこと。その3割も「売れ筋」ではないものに限定しています。

つまり、消費者としては「大して困らない」状態なのです。

よって、今回の「花王製品販売中止宣言」は、

他メーカーの花王追随を防ぐための牽制
消費者へのアピール

といった意味合いが強いものと思われます。

値上げは了承せざるを得ない

残念ながら、もはや値上げは趨勢です。いまのところ、様子見している他メーカーも、実態を把握すると値上げに踏み切ります。早晩、オーケーも値上げを了承せざるを得なくなるでしょう。