スーパーのオーケー(オーケー株式会社 以下オーケー)が、花王(花王株式会社 以下花王)製品の取り扱いを一部中止しました。
オーケー、花王の145品販売中止 「商品見直しの一環」|日本経済新聞
この報道に対し、最も多かったコメントは
「他のメーカーのものを買えばいいんじゃないの?」
というもの。しかし、なかなかそうもいかないのです。
花王の扱う、アタック・ビオレ・マジックリンなどの日用品は、他社へ乗り換えしづらいものだからです。
「いつもよりシャツの匂いが強い」「お風呂上りに背中がかゆい」
こういったことは避けたい。だから、使い慣れたものを買う。実は、これが日用品を選ぶ理由のトップでもあります。
洗濯用洗剤ブランドの使用意向理由について、アタック、アリエール、トップを比較すると、3ブランドともに「使い慣れている/ずっと使っているから」が1位の理由となりました。
最新 洗濯用洗剤の利用率ランキング!3位は「ワイドハイター」、2位は「アリエール」、1位は?|スパコロのプレスリリース
これら日用品で花王はトップシェアです。花王製品が無いと、「オーケーでは食品だけ買って、洗剤はドラッグストアに行くか」と、他店に流れてしまう。客単価低下。売上低下。シェアが大きいだけに、影響は小さくありません。
では、なぜオーケーは「花王製品販売中止」を宣言したのか。そして、なぜ花王は「値上げ宣言」せざるを得なかったのか。考察します。
花王「値上げ訴え」の本気度
なぜ、最初に値上げを訴えたのが「花王」だったのか。理由は、花王の高い危機察知能力にあります。
花王の管理会計には定評があります。1962年に、管理会計に必須の「直接原価計算」を導入。材料費など変動費の発生状況を早い段階で把握し、実績値と計画値を詳細に差異分析し、分析結果を踏まえ、将来の収益を予測しています。分析・予測精度とも、とても高い。
つまり、花王は「危機察知能力」が、他社以上に高い、と言えます。
その花王が、来期(2022年度)の材料費高騰による利益影響を「▲110億円」と予測しました。粗利益率(売上総利益率)に置き換えると、0.77%の悪化です。2.35%悪化した前期(2021年度)から、さらに悪化する可能性が高い。
危機感を高めるのは当然でしょう。今回の「値上げ宣言」の本気度は、相当高いはずです。
「昨今の原料高は(今までと)次元が異なる。日用品メーカー最大手の花王がリーダーシップをとらなければ値上げは前に進まない。必ず値上げをやっていく」
オーケーと対決、花王「値上げ宣言」で広がる茨道 | 東洋経済オンライン
オーケー「花王製品販売中止」の本気度
対して、オーケーの「花王製品販売中止」の本気度は、あまり高くありません。
筆者の近隣のオーケーでは、アタック・ビオレ・バスマジックリンなどの花王の主力製品は、今も販売されています(2022年2月23日現在)。確かに、詰め替えなどは大きめのサイズだけ。香りも1種類だけ、などアイテムは絞り込んでいます。しかし、ニュービーズなど安価な花王製品は全ての香り(2種)を揃えています。今回の花王製品販売中止は取扱商品中3割程度、とのこと。その3割も「売れ筋」ではないものに限定しています。
つまり、消費者としては「大して困らない」状態なのです。
よって、今回の「花王製品販売中止宣言」は、
・他メーカーの花王追随を防ぐための牽制
・消費者へのアピール
といった意味合いが強いものと思われます。
値上げは了承せざるを得ない
残念ながら、もはや値上げは趨勢です。いまのところ、様子見している他メーカーも、実態を把握すると値上げに踏み切ります。早晩、オーケーも値上げを了承せざるを得なくなるでしょう。