東京の不動産はこれから買うには高すぎるのか?

ネット上で東京の不動産に関する記事を読んでいると、東京からの人口流出の原因として、不動産価格の上昇を挙げている人がいました。居住コストが高くなり過ぎて、東京に住めない人たちが、東京から脱出しているというのです。

新型コロナウィルスで、在宅でのリモートワークが普及し、通勤の負担が減少した人たちが、より良い住環境を求めて都心から埼玉や千葉などに転居が増えていると言われています。

広い住宅を確保しようとすると、同じ場所では購入するにしろ賃貸するにしろ手が出ないので、郊外に移っているという見立てです。

確かに、東京の不動産価格は以前に比べて、特に都心部で一段と上昇しています。

週末になると、新聞の折り込みチラシにたくさんの不動産物件が掲載されています。その価格は、真面目に働いて労働収入だけで購入できる金額をはるかに超えています。

例えば、写真の物件は85平米と、ファミリータイプの間取りですが、価格は仲介手数料などの諸費用を入れれば3億円近い高額物件です。平均的なサラリーマンの生涯賃金よりも大きな金額です。

また、この物件は賃貸に出ているようですが、現状の家賃は50万円です。かなり高額の家賃ですが、販売価格から賃貸利回りを計算すると2%程度しかありません。

私がメインの投資対象としている都心の単身者向けの賃貸ワンルームマンションは、今購入しても賃貸利回りが4%程度あります。

利回りから考えれば、50万円の家賃は安過ぎるか、物件価格が高すぎるか。いずれかということになります。

東京の不動産価格が高いのか安いのか。これは過去の価格と比較しても意味はありません。現時点の他の資産との相対的な比較で考えるべきです。

もし、今後日本国内でもインフレになれば、不動産の価格は相対的に割安になっていきます。

私は国内不動産には現状も強気で、今月もまた新宿区に物件を購入する予定です。でも、自宅に関しては持ち家派ではなく賃貸派です。

不動産価格の上昇と安定したインカム収入の恩恵を享受しながら、自分の好きな場所に物件を借りて住むのが、現時点でのベストな選択だと思っています。

GoranQ/iStock


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2022年3月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。