チェルノブイリ原発の電源が喪失されたそうです。BBCニュースの日本語HPによると、「国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は、停電が安全性に影響を与えることはない…電力供給がなくても、使用済み核燃料が事故の原因になるほど高熱になることはないと述べた。」とのことです。
これは、使用済み核燃料は崩壊熱を出すので、水で冷却保管しているけど、電源喪失で水の循環が止まることに対する見解です。
ツイッターで細野豪志さんが「IAEAは水があるから冷やせているとしているが、温度が上がれば水は蒸発するので冷却するか、新たな水を供給する必要がある。それにはやはり電力が要る。あの原発事故で最大の懸案となった4号機プールの核燃料棒は約1,500本。古い燃料だとしても20,000本は恐ろしい。」とのツイートに対して、池田信夫さんが「20年前に廃炉になったので発熱はほとんどなく、放置しても70℃ぐらいまでしか上がりません。空冷でも冷やせる程度。」とリツイートしています。
それに追加で僕もツイートしました。
「論文によると「燃焼停止直後の FP 崩壊熱は,運転時出力の約6.5%。発熱が燃焼停止直後の1/10になるのは8時間後。1/1000になるのは3年後。燃焼停止後10年で1/2000。」 ということで、20年経っているのは、自然空冷で問題ないということだと思います。」
これは、学術解説論文(吉田正(著)「軽水炉燃料崩壊熱のふるまい 福島第一発電所の崩壊熱挙動理解のために」日本原子力学会誌, Vol. 53, No. 8(2011))の内容を引用したものです。
崩壊熱とは、原子炉の運転中に生成される核分裂生成物(FP)の不安定な原子核の時間遅れを伴う崩壊,つまりα 崩壊ないしβ 崩壊に伴って発生するもので、論文の図に示されているように、時間と共に減少していきます。ここで重要なのは、崩壊熱は核分裂(質量欠損)ではないということです。α 崩壊ないしβ 崩壊は質量は変化しません。出てくる放射線が他の原子に衝突して、原子を振動させてねつがでるのです。
それで、燃焼停止直後の FP 崩壊熱は,「運転時出力の約6.5%。発熱が燃焼停止直後の1/10になるのは8時間後。1/1000になるのは3年後。燃焼停止後10年で1/2000。」となるわけです。
日本では、資源エネルギー庁のHPによれば、運転停止後7年間水冷で、その後自然空冷で使用済み燃料を保管することを目指しているらしいので、運転停止後20年経ったチェルノブイリ原発の水冷の電源が落ちても問題ないと言えると思います。
以下に資源エネルギー庁のHP「使用済の核燃料を陸上で安全に保管する「乾式貯蔵」とは?」の該当部分を紹介します。「使用済燃料はプールの中の水で冷やすことが必要というイメージがあるため、容器に入れるだけで常温で貯蔵することなんてできるの?と疑問がわく人もいるかもしれません。たしかに、原子炉から取り出したばかりの使用済燃料は、放射線量が高く余熱も残っているため、そのまま乾式キャスクに収納することはできません。まずは使用済燃料プールの水で十分に冷やすことが必要です。東海第二発電所では、7年以上冷却した使用済燃料を乾式キャスクに入れることになっています。乾式キャスクに入れた状態では、容器の外側の温度は40~50℃前後。熱めの温泉くらいの温度ですから、空気の循環で冷やすことが十分可能なのです。」
原子炉がどう言う仕組みで発電しているのか、核分裂(質量欠損)の解説動画は以下をご覧ください。
【オンライン授業-26】GE日立NE社が次世代「小型モジュール炉」をカナダで受注!自然循環のみで炉心を冷却できる原子炉BWRX-300とは?[日立評論 Vol.102 No.02 280-281]
【オンライン授業-30】大反響!GE日立ニュークリア・エナジー社の次世代原子力発電の「小型モジュール炉(SMR)BWRX-300」に関する質問箱
■
動画のノギタ教授は、豪州クイーンズランド大学・機械鉱山工学部内の日本スペリア電子材料製造研究センター(NS CMEM)で教授・センター長を務めています。