令和の若者とテレビ世代で話が通じない理由

黒坂 岳央

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

昔から「若者の考えていることはわからない」と年上は繰り返し言ってきた。「最近の若者バージョン」だと、「コスパ世代」などと呼ばれており、上の世代からは「酒もタバコもやらないなんて人生で損をしている」などと言われているようだ。

なぜ「若者はわからない」という年配がいるのか?本稿でそれらの本質的理由を探りたい。

Ljupco/iStock

変わったのは若者ではなく、年配が変化出来なかった

筆者は昔から「若者が理解できない」という年配がよくわからなかった。同じ人間、同じ国で育っているわけで、違いが生まれる理由があるとすれば若者が変化したのではなく「年上の世代が、先端の技術や文化、環境変化における認識についてこられなくなった」と考える方が自然ではないだろうか。つまり、時代の変化についてこられない人たちが「あなたたちは自分たちと違う考えでおかしい」と言っている構図になると考える。若者は生まれたときから先端のテクノロジー、文化やメディアに触れているため、ある意味でその時代を映し出す鏡と言える。つまり、「若者が理解できない」という主張は「今の時代を理解できない」と言っているに等しいのではないだろうか。

アニメやゲームなどのサブカル消費も、上の世代は先端の作品より過去に人気を博した名作リメイクを好む傾向も見られ、サブカル一つとっても最新の作風などの感覚について、若者との差が生まれていることからもわかる(詳細は過去記事参照)

変化したのは若者ではなく、年配が変化する時代についてこられなかったものと筆者は理解している。

情報源の差が認識の格差を生む

ロシア・ウクライナ問題で先日、次のツイートが大きな話題を呼んだ。詳細は画像を参照頂きたいのだが、ウクライナの惨状を正確に伝えない情報統制が行われたことで、父子の会話が成立していない状況を示している。

これを受け、東京大学の小泉氏は「情報統制はテレビしか見ない層に有効。ネットの情報に触れている層と認識が合わない状況を生み出している」と指摘する。この状況、筆者は既視感を覚えた。我が国における新型コロナの感染拡大について同じようなに感じることがあった。テレビしか見ない親戚の年配の人物とこの手の話題をすると、恐ろしいほど会話が成立しない。まるで「地球は丸い」と信じる人と「地球は平面」と信じる人との間で会話をしているような感覚に陥ったのだ。

筆者は決してテレビのすべてがデタラメなどと暴論を言っているつもりはない。真相を報道する責務を全うするため、日々体を張っている報道陣はたくさんいる。時間を使って見る価値のある、素晴らしい番組が世の中にたくさんあるのも知っている。だが、ネットとテレビ、それぞれを主たる情報ソースにする層の違いが、そのまま年配と若者の間の溝となっていると思うのだ。

テレビの健康食品を買い続ける親戚

親戚の年配女性に健康に熱心な人物がいる。会うたびに「納豆がいいらしい」「バナナがいい」といい、その都度1つの食品を爆買いして食べ続けている。聞けば、昔からテレビの健康番組にハマっており、そうした健康食品の効用が取り上げられるたびに、その食品を食べ続けるという消費行動を取っているらしい。

一度、本人に正論を言ったことがある。筆者は医師ではないものの、健康における一般論として「食品の栄養は総合的に考えた方がいい。どれだけ体に良いとされている食品でも、過剰摂取は毒になり得る。同じものを集中的に食べるより、バランス良く食べるべきでは?」という趣旨の話をしたことがあった。しかし「でもテレビの先生が健康に良いと言っていた」とまったく聞き入れられなかった。その回答を聞き、すぐ意見を伝えるのを諦めた。

ネット情報に触れる世代は視野が広い?

インターネットで記事を書き、動画を出すと必ず多面的な意見が寄せられる。的外れなものや、内容を読まずにタイトルだけで感想を書いて来る場合も多いが、時には「確かに。そういう視点はなかった」と思わされることもある。また、自分がニュースを見る場合においても、必ずTwitterなどで複数人の専門家たちによる、様々な議論を多面的に確認するようにしている。気になるニュースは日本語だけでなく、必ず英語でも調べる。そうした情報消費様式に慣れると「情報とは一方向からではなく、多面的に考えて総合的に判断するもの」というスタンスが当たり前になる。

このように情報を消費しているのは、筆者だけではないはずだ。どちらかといえば、テレビ世代ではなく若者世代の方が割合は多いだろう。もちろん、ネットの情報を一方向から見てすべて鵜呑みにしてしまう人物もいるが、テレビと異なるのは情報意欲がある人には、多様な意見を受け入れることが可能という点にある。

デジタルネイティブ世代の情報ソースは、従来のマスメディアではなくネットがメインだ。結果としてテレビ世代と比べて意識すれば触れられる情報源の豊富さも、視点の多さも違う環境に身をおいている。

だが「ネットこそ大正義」と思うのも危険である。小賢い人がネットを使うことで逆効果になることもあるからだ。自分が支持したい情報を効率的、偏重的に収集することで、誤った認識を強固にしてしまうケースすらある。だからインターネットも「使用するユーザーの知恵次第」という点は否定できない。いずれにせよ、世代間の認識の格差が生まれる根拠の一つが、情報ソースの違いというのが筆者の結論である。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。