米国の保守系ニュースサイト「ワシントン・イグザミナー」は15~16の両日、トランプ前大統領の電話インタビューの内容を報じた。その中でトランプは、ウクライナ紛争に係るプーチン露大統領への心境と、マイク・ペンス前副大統領への思いを、それぞれ坦懐に吐露している。
15日の記事によればトランプは、プーチンのウクライナ侵攻について、「私は驚いている。国境に軍隊を送ったとき、彼が駆け引き(negotiate)していると思っていた」、「厳しい交渉だが、賢い交渉の仕方だと思った」と、2月21日のプーチンの最初の演説を聞いた当時の心境を語った。
トランプは、「私は、米国や彼らが取引しがちな他の人たちと同じように、彼が良い取引をするつもりだと思っていた」、「ほら、すべての貿易取引のようにね。私が(ホワイトハウスに)来るまで、我々(米国)は良い貿易取引をしたことがなかった」と続けた。
そして「彼は変わったと思う。彼は変わったと思う。世界にとって、とても悲しいことだ。彼はとても変わってしまった」と付け加えた。
偽らざるところではなかろうか。トランプとプーチンと安倍晋三のいた4年間、少なくとも彼らは何時でも緊密に話し合いができたことは間違い。米露の間ではINF条約からの離脱もあった。ロシアの条約破りが表向きの理由だが、実際は米露両国が中国のミサイル開発の脅威を認識してのことだ。
トランプは、バイデンが制裁を解除したNord Stream 2に触れ、「私はパイプラインを閉じた。パイプラインは閉鎖され、バイデンがそれを開いたんだ。さらに、私は今まで誰もやったことのないような大規模なロシアへの制裁を行った」と述べた。
さらに「私はパイプラインの立場から、主にヨーロッパをロシアから守るためにNATOで何十億、何百億ドルも調達する立場から、プーチンを非常に批判してきた」とし、「誰もそんなことはしなかった」と強調した。
そして、「私はプーチンに対してとてもとても厳しい態度をとってきた。その点では悪い評価を得ている」と述べ、自分が大統領だったら、彼はウクライナに侵攻しなかっただろうとの主張を繰り返している。周りから「何をやるか判らない」と思われていることの自覚があるようだ。
加えて「よく考えてみれば、私よりロシアに厳しかったのは誰だ?」とトランプは問いかけ、NATOのために「何十億ドルも何百億ドルも手に入れた」、「今、そのお金はすべてロシアに対して使われている、だから私はそれをやった」と強調する。
それは、NATO加盟国に国防予算の増額を説得するために行った強硬策を指す。トランプは「一国への攻撃は全加盟国への攻撃であると見做す」という第5条の約束を無視すると脅したことを認めた。そうしなければ国防費のGDP2%を達成できないからだという。ドイツは今まさに、そうしつつある。
トランプはまた、米国の核兵器プログラム近代化に対する彼の政権の取り組みに言及し、このアジェンダはプーチンが望むものとは正反対であり、我々がプーチンのカモでないことを証明するものだった強調した。目下バイデン政権下に進行中の「核態勢見直し(NPR)」を牽制する発言だろう。
トランプは「それと同時に、私は彼(プーチン)ととても仲良くなった。しかし、私はほとんどの(世界の指導者たちと)非常によく仲良くなった」と締めくくった。
確かに、北朝鮮の金正恩も、中国の習近平も、トランプ時代には大人しかった。それはバイデンのように初めから、小規模ならウクライナに軍を出さない、などと宣言するような、判り易い弱腰な人物では、トランプはない。それが、NPRで曖昧戦略を維持すべき所以だ。
目下のトランプは、特に民主党からプーチン批判を軟化させたと批判されている。それは印象操作報道のせいだが、一部の共和党員からも、表立ってではないが、批判を受けている。が、トランプはこのインタビューで、改めてプーチンに甘いという指摘を否定した格好だ。
中間選挙や24年の大統領選で共和党の焦点の一人であるペンス、彼の件については後日に。