日本の戦後外交はどちらかといえば日本からは強い意見を言わない受身外交と敵を作らない八方美人外交ともいえます。特に日本を取り巻く隣国は中国、韓国、北朝鮮、ロシア、地域としての台湾、それにアメリカという難しい国ばかりなのです。
この構図ではアメリカを取り込まないと外交的に立ち行かないという難題を抱えているわけで好む、好まざるにかかわらず、アメリカとの密接な関係は日本の生命線であるとも言えます。
一方でそれに頼り過ぎているがゆえに自立できていないのではないか、という批判も当然あるわけです。軍を持たない日本を指摘する声です。ただ、「自衛」の解釈は時代背景次第で広義にも狭義にも取れる含みがあるという気はしています。海外できな臭い動きが出てくればこの解釈論は変わってくるかもしれません。
それはさておき、ロシアが平和条約交渉の打ち切りを一方的に申し入れてきました。「一方的」というのは日本から見た解釈でロシアからすれば日本は「一方的に」ロシア制裁に加担したではないかという訳ですから「おあいこ」だろうということになります。
日本がウクライナ側に立つのはもちろん人道的問題があるからですが、それ以外にG7という枠組みの中で唯一のアジアの国家として毅然とした態度を取らざるを得ないからです。言い換えれば日本が仮にG7のメンバーでなければここまで踏み込んだかどうかは疑問であります。
日本外交は事なかれ主義であり、仮に嫌な相手がいれば喧嘩をするのではなく、シャットアウトする手法を使ってきました。つまり交渉しない、であります。北朝鮮しかり、韓国しかり、であります。が、今回は先方からそのカードを切られたため、日本の対ロシア外交を今後、どう進めるのか、極めて慎重な判断を必要とします。
判断のタイミングはまずはこの戦争の決着(含む停戦)であり、戦後、ロシアの経済が回復、自立できるのかを見届け、国家の体制が維持できるかを確認する必要があります。プーチン氏自身はどういう形にしろ国際舞台には戻れないので傀儡を含めたトップの行方が一つの焦点です。ここまで数年単位になるかもしれません。
その間、日本はロシアとは極めて厳しい関係に陥るとみています。原油やガスは入らない、一般貿易も細り、往来も激減するでしょう。今後、あり得るロシア側からの制裁としては漁業権交渉が行き詰まると思います。あの辺で操業する日本漁船が拿捕されるリスクは急速に高まるかもしれません。
ロシア上空を民間機が飛ぶのも制約を受ける公算が出てくるでしょう。その場合、日本から欧州線はアンカレッジ経由や北極路線の開拓が必要です。物流についてはシベリア鉄道ルートが閉ざされるし、既にニュースになっているように日本の中古車の大口の捌き先が無くなります。ロシア産の木材が入らない公算も出てくるので住宅市場には影響が見込まれます。
もっとグローバルな観点で見ると個人的には世界の二分化が起きるかもしれないと思っています。ロシアを支えるのは中国でしょうから西側諸国とは冷たい関係になるのか、ここがキーポイントです。仮に中国ロシア連合が出来た場合、地球ベースでは割とそちら側に着く国も多いはずで案外、半々ぐらいの規模になるかもしれません。その場合、世界経済への影響は大きく、アメリカの威信は曇ったものになりかねません。
では日本の進める外交ですが、ご批判は覚悟で申し上げるなら韓国を取り込んだほうがいいと思います。理由は朝鮮半島は日本防衛のクッションだという発想は西郷隆盛ですらしていたわけで、朝鮮半島に日本が組みする相手を持たないのは致命的欠陥となるのです。世界が平和な時は構わないですが、今後の荒れるかもしれない地球規模の外交を考えると韓国の新政権とは対話をするべきだと思います。
中国とはニュートラルにすべきでしょう。私が一番気にしているのは北方領土と樺太開発を誰が主導権をもって行うか、であります。ロシアには資金的にできないでしょうからこれを中国がとって代わって行った場合、日本にとっては致命的ダメージとなります。
外交というのはオセロゲームのようなものである時、突然、石の色が変わることがあります。今、我々はその最中にいます。ウクライナは遠い国と言っている場合ではなく、火の粉はいつどこから飛んでくるかわからない、そんな状況です。
日本は政府も企業も社会も覚醒しなくてはいけません。残念ながら平和ボケしている余裕はあまりないかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年3月23日の記事より転載させていただきました。