(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
「台湾は次か?」──米国の対外戦略専門家の間でこんな疑問がより真剣に提起されるようになった。
ロシアがウクライナを侵略し、米国がその対応に右往左往し、その間に中国がロシア支持に傾いて、影響力を増す。そんな情勢下で、中国がかねての念願である台湾の武力併合に踏み切る条件が整ってきたと判断するのではないか、という懸念が広がっている。
中国は米国の力が衰えたと判断
ワシントンに本部をおく米欧安全保障研究機関「大西洋協議会」のマイケル・シュルマン主任研究員が3月初めに発表した論文は、まさに「台湾は次か?」と題されていた。シュルマン氏は米欧の安全保障だけでなく米中関係にも詳しいベテランの研究者である。
シュルマン氏はこの論文で、バイデン政権が軍事がらみの反撃策を当初から排除したことがプーチン大統領を勇気づけたとしながら、ロシアのウクライナ侵略の中国への影響を詳しく論じていた。その骨子は以下の通りである。