東芝劇場、私の考える代替案

私がまだまだ続く東芝劇場、と言い続けているのは経営側も株主であるファンド側も腰抜けで小手先勝負をしようとしているようにみえるからでしょう。申し訳ないと思いますが、東芝問題は今の経営陣では全く解決できる見込みがないと思いますし、ファンドもそれぞれが好き放題言いたい放題でこの数年、全く状況が改善せず、ファンドとしても株主として長くなってきている中、リターンが取れないと困るはずです。

東芝HPより 東芝本社

昨日の臨時株主総会。法的拘束力はないとしたものの着目点は2つで、1つは東芝経営側が提示する会社分割案の「事前承認」が株主から得られるか、でありました。もう1つは暫定新社長兼CEOの島田太郎氏がどのような顔を見せるか、という点でした。会社分割案の否決を受けて島田社長は「今回示された株主の意見を踏まえ、企業価値の向上のためにあらゆる戦略的選択肢の検討を行っていく」とモノトーンな口調となっていますが、否決される可能性が高かったことはあらかじめ承知していたうえでの発言かと思います。ちなみに取締役会議長は綱川智氏が引き続きやっています。

このままでいくとまず、6月の株主総会の行方が非常に怪しいものになります。まず、島田氏が承認されるのか、という疑問があります。同氏は外資系企業を通じて海外畑が長かったため、外国人株主との対話に慣れているのではないか、ということが最後、社長になるための決め手になったとされます。島田氏に悪意をもっていう訳は毛頭なく、あくまでも例えですが、これでは「お前は英語が出来るから海外駐在員に行け」というのと同じレベルになってしまうのです。

島田氏は私の見る限り技術者、そして素晴らしい才能をお持ちだと思いますが、会社のかじ取りをするのが彼の得手な仕事かといえば私にはよくわかりません。

東芝のそもそもの問題を一言で言うと江戸時代末期、黒船が来たことでおののいた幕府と朝廷の話と全く同じ構図です。東芝は江戸徳川幕府と同様、安定した平和な社会の中でいろいろな事業を展開してきました。江戸時代に文化が栄えたというのはとりもなおさず、争いがなかったのでそのような社会が生まれたわけです。

東芝も全く同様で、平和でおっとりとした社風の中でそれなりの事業を展開してきたのです。が、突如の内部問題で会社存続が危ぶまれる中、綱渡りのような経営をしながら、最後、上場を維持したいがために綱川氏が複数のファンドに資金を出してもらったわけです。これぞ、井伊直弼であってファンド主導の安政の大獄まであったわけです。ならば、桜田門の変がなければおかしいわけで、綱川氏が議長の席にいること自体がそもそも違うのだろうということになります。

では、幕末はどういう展開だったかといえば開国を迫る諸外国と苦労しながらも対峙し、大政奉還が起きて、朝廷が復活したのが結論でした。つまり日本は開国こそすれど植民地にならず、新しい国の体制が生まれたわけです。ならば、東芝もそうなればよい、というのが私の考えです。

具体的にはどうするのか、です。

ズバリ、ホワイトナイトと探す、それも東芝が水面下で探しているファンドではなく、事業会社です。できればソニー、日立クラスが良いと思います。日立だと独占禁止法に引っかかる部門があるかもしれませんが具体的話はともかく、日本の事業会社が東芝をいったん傘下に収めるか、合併させるのがベストだと思います。

現在、外国人株主の構成が5割強、金融機関が24%程度、個人が20%程度、あとその他となります。ホワイトナイトが上手にTOBをかければ成功する確率は大いにあるとみています。東芝の時価総額は2兆円程度しかありません。北米で見る会社規模からはとても小さいのです。ちなみにソニーは16兆円強、日立も6兆円程度あります。このホワイトナイトのポイントは日本の電機会社が東芝を一旦傘下に収めるという荒業です。

外国人投資家は「あっと驚く」手法に弱いのです。小手先のテーブルに並べられた議論をするとこねくり回すので日本人にはお手上げというのが私の30年の経験です。それゆえに面倒な外国人の言い分を押さえるには「えぇ、そう来るの?」という切り口が絶対に不可欠です。それができるのは申し訳ないですが、組織上がりの人ではできないのです。孫正義氏や永守重信氏といった百戦錬磨の人がやらないと無理なのです。

もう一つの手法はそれこそ、永守氏を三顧の礼で迎い入れるという方法もあります。つまり、剛腕創業系経営者をもってきてファンドの少なくとも半分の同意を取り付け、金融機関と個人株主、機関投資家の賛同も取り付けて一気呵成に「明治維新」を行うのです。

明治維新をするために戊辰戦争という日本最大の内戦を戦ったではないですか?東芝を救う無血開城ができるかは発想の転換、これが全てだと思います。私は規模こそ違えど、30年間で学んだ海外での「切った張った」をずっと実戦でやってきています。今の東芝経営陣はサラリーマンすぎる、それが私の見た姿です。「燃えよ、東芝」です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年3月25日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。