保険営業と不動産営業の「大きな違い」

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営業の仕事をしている人で、ご一緒する機会の多いのは、保険や不動産の販売をしている人です。

ワンルームマンションの日本一の販売記録を持つ不動産営業のカリスマ社長と会食した時、2つの商品ではアプローチの方法が随分異なることを教えてもらいました。

保険のような金融商品は、金融庁によって規制されており商品の差別化が難しく、価格の違いもあまりありません。

また、商品内容が複雑で、顧客が商品の違いを理解しにくい面もあります。他の営業担当者との違いをアピールしても、なかなか響かないそうです。

となると、差別化のポイントは「人間力」です。圧倒的な商品知識、きめ細かなアフターサービス、高度なコミュニケーション能力などが、営業成績のキモになります。

一方の不動産の場合、同じ物件は1つしかありません。商品は全て「一点もの」です。

同じ物件を複数の販売会社が競争で売ることもあります。しかし、中古ワンルームマンションのような物件は、在庫を保有した会社しかその物件を販売できません。

だから、どの物件を販売するかによっても、営業成績に差が出てくるのです。逆に言えば、良い商品さえ仕入れられれば、営業能力で勝てなくても有利に商談を進められることになります。

もちろん不動産営業でも担当者の専門知識や、コミュニケーション能力、お人柄といった要素は重要です。信頼できる担当者だと思われなければ、安心して購入できないからです。

しかし、金融商品のような画一的な「コモディティ」に近いプロダクトを売るよりも、不動産のような一点ものを売る営業の方が、営業担当者の能力の比率が低くなると言えます。

保険の営業は担当者の能力次第、不動産の営業は仕入れの力も大切。

同じように見える仕事でも、「ゲームのルール」は違うのです。

不動産の営業担当者は、会社が変わると営業成績が急激に伸びることがあります。これは、本人の努力もありますが、良い商品を取り扱っている会社にいることも大きな要素と考えられるのです。

営業という仕事が苦手な私にも納得できる営業のカリスマからの興味深い話でした。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2022年3月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。