他人事とは思えないトルコの急激なインフレ

日本経済新聞によれば、トルコの2022年3月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比で何と61%に達しました。

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トルコリラが昨年末から急落し、インフレ懸念が高まっているにも関わらず、トルコの金融政策は景気浮揚を優先して緩和を続けています。これは、トルコのエルドアン大統領の意向を強く反映しており、引締めを行おうとする中央銀行総裁を次々に解任しています。中央銀行の独立性が確保されていない状態です。(図表を元の記事で見る

さらに、2月のロシアによるウクライナ侵攻でエネルギーなどの価格の上昇が進み、インフレに拍車をかける状態に陥っています。

トルコリラは今年に入ってからは低位安定していますが、対円で見ても昨年後半には1トルコリラ=15円前後たったのが、今や8円台まで下げています。日本円に例えれば、1ドル=120円だったのが、200円になったような感覚だと思います。

トルコの経済の混乱を他人事のように考えている日本人がほとんどだと思います。しかし、状況は何だか似ています。

インフレ懸念が高まり、各国が金融引締めに転じている中で、異次元緩和を続ける日銀。トルコリラほどではないにせよ、他の通貨に対して下落が進む日本円。

どちらの国もエネルギーを輸入に依存している点も共通しています。

異なるのは、トルコは中央銀行が利上げしようとしているのを大統領が阻止する構図なのに対し、日本では中央銀行自らが積極的に金融緩和の継続を続けようとしていることです。

トルコ経済と日本経済は規模も安定性も異なり単純比較するのは大げさと思うかもしれません。でも、金融政策を決定する中央銀行が敢えて金融緩和を選択しているというのは、より不安を感じてしまいます。

トルコが日本にとって「炭鉱のカナリア」にならないことを祈りながら、最悪の事態に備えた準備を進めていこうと思います。

明日から始まる早稲田大学オープンカレッジで社会人向けの資産運用講座でも、この問題への対処法を取り上げます。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2022年4月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。