中米エルサルバドル、2日間で76人が殺害され非常事態宣言を発令

人口の1%が犯罪組織に属している

国の人口の1パーセントが犯罪組織の組員であるという国がある。中米のエルサルバドルである。人口700万人の内の7万人が3つの犯罪組織の組員となっている。この3つの犯罪組織というのは「マラ・サルバトゥルチャ(MS13)」、「バリオ18(B18)レボルシオナリオス」と「バリオ18(B18)スレーニョス」の3つである。この犯罪組織を構成しているのは若者で、彼らの顔や身体に入れ墨をしているのが特徴だ。それが彼らのシンボルとなっている。しかも彼らに協力している者が100万人近くいると推察されている。まさに犯罪立国である。

3月下旬から30日間の非常事態宣言が発令された。独裁者になりつつあるブケレ大統領が発令したもので、コロナ禍によるパンデミックではなく、殺人事件がまた急増しているのが理由だ。例えば、3月25日に14人が殺害され、26日には62人が殺害されたということで76人が僅か2日間で命を失ったのである。3月27日付「エル・パイス」から引用)。

問題は犯罪組織が誰彼の見境いなく人を殺害していることなのである。例えば、通りで作業をしていた人を殺害したり、果物を売っていた人やパン屋の主人といった犯罪組織とは全く関係ない人が何かの理由で邪魔になったというただそれだけの理由で殺されているのである。

非常事態宣言の内容

この非常事態宣言によって次のようなことが制限された。

出国と入国の自由を制限、言論の自由の制限、更に交信並びに通信上の制限が裁判所からの事前の許可なく遂行できるとした。また集会の自由が制限され、また取締り関係当局によって拘束された際にもその理由の説明が必要なくなり、拘束期間もこれまでの72時間から15日間に延長された。

そしてブケレ大統領は軍隊と警察が徹底していてこの3つの犯罪組織を取り締まることを要求した。またそれが容易にできるように非常事態宣言を発令したのである。よって街には軍人や警官が通行人を徹底して調べる作業が繰り替えされている。

このような人権を無視したような手段が取れたのも立法議会で定員84議席の内の4政党による与党が67議席を有しているからである。しかも、ブケレ大統領は政府が今回取っている措置が人権に触れるといったようなことを指摘しないように判事を牽制した。

政府と犯罪組織の間の密約

しかし、今回殺害事件が急激に増加している理由は、これまで公然たる秘密とされていた犯罪組織と政府との密約のどれかが満たされていないのが理由だと専門家の間では見ている。その密約というのは以下の概要である。

  • 刑務所に収監させられている彼らの幹部が外にいる幹部と頻繁に携帯で交信できるように便宜を図る。
  • 彼らへの取り締まりを緩和化させる。刑務所内での生活を向上させ
  • 彼らのリーダーを米国に送還するのを政府は拒む。
  • 刑務所の一つの独房には同じ犯罪組織の組員だけを入れ、他の犯罪組織の組員との混成はしない。

以上がその主な内容であった。

非常事態宣言は4月末まで継続する。それで殺害事件が減少しても、この3つの犯罪組織が消滅しない限り犯罪が減少することはない。