EUが天然ガスの供給をロシアに依存する限り制裁効果に限界あり

既に400万人以上のウクライナ人(特に女性と子供)が隣国などに避難している。スペインでもすでに2万5000人のウクライナ人が避難し労働に必要な在住許可書も取得している。また2000人余りのウクライナのこどもたちが入学を済ませている。

天然ガスと原油のロシアからの供給を遮断させない限り侵攻は続く

プーチン大統領が指令しているロシア軍のウクライナ侵攻をやめさせるにはEUがロシアから天然ガスと原油の輸入を止めない限りロシアは撤退しない。EUは天然ガスでは消費量の45%、原油は27%、石炭は46%をそれぞれロシアから輸入している。それは、ロシアにとって天然ガスの場合は生産量の60%をEUに輸出していることになる。(3月9日付「エル・パイス」から引用)。

しかも、現在これらの資源が値上がりしていることからロシアは逆にこれまでよりも収入の増加となっている。侵攻を開始する以前と比較して日毎に10億ドル以上の収入増しになっていると推測されている。3月9日付「エル・コンフィデンシアル」から引用)。 

ロシアの自然資源に依存しているEU加盟国は複数ある

EUが団結して天然ガスと原油のロシアからの輸入の停止に戸惑っているのはリーダー国であるドイツを始めロシアからの輸入への依存度が高い加盟国が複数あるからである。天然ガスの場合だと消費の50%以上をロシアからの輸入に依存している国がハンガリー、スロバキア、ブルガリア、フィンランディア、ドイツ、ポーランドと6ヶ国ある。またレトニアとチェコの場合は100%ロシアに依存している。因みに、スペインはロシアからの天然ガスの依存度は少ない。消費量の45%をアルジェリアから輸入しているからである。

原油の場合だとスロバキアの78%を筆頭にレトニア、ポーランド、フィンランディアの3か国がそれぞれ60%を少し超えた依存度となっている。ドイツの場合は30%弱となっている。(上記エル・パイスから引用)。

特にEUのリーダー国であるドイツの場合、天然ガスと原油のロシアからの輸入を停止した場合に経済の後退はGDPで5%になる可能性があることをハーベック経済エネルギー相は予測している。しかし、ドイツ国民はプーチンの資金調達を遮断させるために経済後退による犠牲を払う用意があると世論調査で答えているという。(3月14日付「エル・ディリオ・エス」から引用)。

更にロシアがルーブルでの支払いを要求していることに対し、あくまでユーロかドルの支払いしかしないことを表明している。その一方で、ドイツはガスの輸入量が減少することを念頭において配給制度を設ける準備も進めている。

EU委員会は当初ロシアからの天然資源の依存は2030年に終止符を打つとしていたがが、それを3年早めて2027年としている。

プーチン大統領はEUはロシアからの自然資源の供給なしには存続できないと判断しているようだ。そしてウクライナ紛争に勝利すればEUとの関係回復の道は自ずと開けるとプーチン大統領は判断していたようであるが思惑は外れ、現状では彼を戦争犯罪人として裁くことを要求するようになっている。