全国382万社中、中小企業が99.7%の日本。私はこの構造改革の時が否が応でもやってくると考えています。2020年代中に中小企業の比率は今後さらに2-3割減ってくる、そんなシナリオです。
2020年に休廃業した会社の経営者の平均年齢は70歳で、全体の60%が70歳以上の経営者の会社となっています。一般的には高齢の経営者ほど休廃業する傾向は強いのですが、それでも2015年には休廃業企業の経営者の年齢で70代は46%にとどまっていました。つまり5年の間に14%ポイントも増えているのです。
もちろん、コロナという理由もあるのでしょう。ですが、本質的には私は高齢の経営者が世の中の変化についていっていないのが理由だと思っています。急速に発展する技術でそれまで当たり前にあったものが全く必要なくなったものもたくさんあります。
日経や日経ビジネスだけ読んでいれば「構造変化への対応」で各社が様々な努力や研究をしながら最新のビジネストレンドを取り込んでいる記事が満載されています。しかし、それらは大手や一定規模がある企業の話です。99.7%の中小企業に目線を移すとそれこそSNSマーケティングですらできない、モノのトレンドすらうまく理解できない経営者が多いのが現状でしょう。ただ、長年経営してきたなかで顧客との長年の関係構築もあり、突然息の根が止まることもなく、じわじわと真綿で首を絞められている状態というのが私の感じたところです。
さて、バブル経済が崩壊して5-10年後に数多くの大企業が倒産しましたが、ゾンビ企業も生み出しました。つまり新しい投資家による企業再生です。このやり方は雇用を守るという政府の大義名分はありましたが、業界の体質改善が一向に進まなかったという意味で強い批判があったことも事実です。私は再生させず、潰してしまえばよかったと今でも思っています。その時は苦しいけれど、そこを乗り越える必要があったのです。が、政府は自己保身という名の優しさを示したのです。
コロナ期に政府は強力なバラマキを行いました。ただ、そのバラマキは企業体質を強化する構造改革支援ではなく、より延命的措置の色合いが強かったと思います。その結果、2021年度の企業倒産件数は6千件弱と57年ぶりの低水準となりました。
企業倒産の傾向を見ると80年代半ばの2万件超からバブル期の90年頃には7千件程度と激減します。その次の倒産件数の山はITバブル崩壊時期の2004年頃、ついで2008年のリーマンショック時期なっています。これはナチュラルだったのですが、コロナ禍では倒産件数は大きく減少します。これが人為的であったことはほぼ断言してもよいと思います。
これが何を意味するか、といえば構造改革を伴わない延命措置であれば各種政府支援が切れ、正常化に向かう今年から来年にかけて倒産件数はぐっと増えると予想できます。理由は経営者の平均年齢が更に上昇し、経営者の代替わりや若返りは限定的になるからです。
経営者の目線からすれば国内で新規に起業、あるいは既存の中小レベルの事業の継続はたやすくありません。まず、内需は人口減、高齢化で確実に需要は減っています。次に技術やマーケティング改革に取り組むにも元手となる資金がないケースも多いようです。3つ目に物価上昇は確実なトレンドで人件費上昇圧力は相当強まるとみています。その場合に中小企業にその体力が残っているのでしょうか?一般的にはよほどの勝算がない限り大手に食われるのが流れかと思います。
少し前の日経に「飲食の来店回復鈍く 感染再拡大、足元の予約3割減 『1軒目で帰宅増加』」とあります。私は感染拡大だけが理由ではないと思います。人々の行動規範が変わってきている、それがこの2年間に明白な形になったということだと思っています。銀座や赤坂のネオン街は私には昭和の面影しかなく、なぜ、あんなところに高いお金を払って行く文化が残っているのだろうと思っています。今の飲み屋文化は確実に形を変えるでしょう。それは時代の要請です。
一般小売店舗でも来店を待つ受動型経営をしているところは閑古鳥となりそうです。近隣の人口のデモグラフィックと収入分布から何をどうやって売るべきか、マーケティング戦略をするのはほぼ無理。結果としてアマゾンや楽天への出店で「日本全国が俺の市場になったぞ」と喜ぶのですが、実際にはそれら大手EC会社が思う存分儲けてそれらを支えている小売業者は手間の割に利益が少ないのが現状です。それでもBetter than nothingという発想になっているのが実情ではないでしょうか?
これでは体力勝負の経営です。加齢とともに続かなくなるのは目に見えているのです。
私は中小企業は大幅再編すべきと思います。繁華街の絵図も全く変わると思います。古びた小さなビルからはテナントが消えるでしょう。そこで区画整理をして大型の都市開発を進めるのがベターだと思います。例えば池袋の西口では巨大な再開発が進みます。多分、山手線沿線では現状、最大級です。小さな区画を大きくする、これはターミナル駅のみならず、私鉄沿線でも地方でも進め、コンパクトシティを作っていく都市空間の再編も含めたニッポン大改革が必要だと考えています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年4月19日の記事より転載させていただきました。