ハラハチブ(腹八分)でイキガイを!

今日はひょんなことから聞いた話を紹介する。欧州で静かに定着してきた‘Hara Hachi Bu’と呼ばれる減量方法だ。場所によっては、‘Hara Hachi Bu哲学’、ないしは「日本で開発された80%のルール」と言った呼び方がされている。

「ハラハチブ」を紹介するオーストリア日刊紙クローネ・オンラインからのスクリーンショット(記事は2022年4月4日)

Hara Hachi Buを日本語で「腹八分」と書けば、すぐに理解されると思う。「腹八分」が哲学と考える日本人は少ないと思うが、オーストリアでは「生涯スリムでいる日本人には、何世代にもわたって使用されてきた古代のトリックがあり、極端なダイエットよりもはるかに優れている。このルールは、腹八分と呼ばれる古代のトリックだ」といった少々大げさな説明文が紹介されている。

オーストリアに住んで長くなるが、「ハラハチブ」という言葉を聞いたのは最近だ。「ハラハチブ」って何、といった見出しの記事が掲載されていた。日本語のような響きだが、最初は何の意味か分からなかったが、後で日本語の「腹八分」を意味するらしいと分かった。「ハラハチブ」を紹介していたのはオーストリア日刊紙クローネだ。医師会の広報でも「腹八分は健康に大切だ」と健康管理と食生活の中で教えているという。

当方は料理番組が好きだが、料理人が結構、日本語を使うのには驚かされる。例えば,「うま味」や「ダシ」だ。「この薬味をいれますと“うま味”がでます」と料理人がいう。「こんにゃくはいいよ。カロリーがないからね」といった話まで飛び出す。

現地の料理人が日本語を自然に使いこなすところをみると、料理の世界、食事の世界で日本語は既に市民権を得ているのだろう。そして今、ついに日本人がスリムであるトリック「ハラハチブ」が登場してきたわけだ。

ルールは簡単で、毎食お腹いっぱいになるまで食べず、最大80%に抑え、健康的な食品の摂取量を増やし、ジャンクフード、砂糖、悪い脂肪などを減らす一方、野菜を十分とり、定期的に魚を食べることだ。

ポイントは「最大80%」だ。もう少し食べたいと思った時点で食事を終える。よく噛み、食事時間を少し長くし、空腹ホルモンを抑え、出された皿の上の食事を全て食べなければならないといった神話を克服し、満腹になるまで食べないことだ。

オーストリアでは米国の国民のように肥満体で悩む人はまだ多くないが、若い世代から着実に増加している。オーストリア国民は肉類が好きで年間食べる肉の量は欧州でもトップを争うほどだ。例えば、ヴィーナーシュニッツェル(ウィーン風カツレツ)は子供も大人も大好きだ。外食ではよく食べるメニューだ。それにハンガリー風のグラシュもよく注文される。

デザートには甘いトルテ(ケーキ)、アップルシュトゥルーデル(生地に包んだリンゴの焼き菓子)に舌鼓を打つ、英国と違って食事のメニューは豊富だ。食欲も出てくるから「ここは腹八分で」というブレーキが必要となる。オーストリアの医者がアクセントのある日本語で「ハラ~ハチブーンですよ」と患者にアドバイスしている姿を想像するとつい笑いたくなる。

オーストリア人は、「日本人は長生きする国民だ」と思っている。その理由は健康食にあると考えてきた。だから、日本の豆腐、納豆にも関心がいく。オーストリアでは豆腐ばかりか、納豆も製造している会社がある。

ただ、日本の典型的な食材だけでは日本人のように長寿は期待できないはずだ、ということで、日本人が小さい時から親から言われてきた「腹八分」という哲学が脚光を浴び出してきたわけだ。女性雑誌などには「ハラハチブこそ最高のダイジェストだ」「ハラハチブで減量を」と言ったキャッチフレーズが見られるほどだ。

「ハラハチブ」で昼食を終え、散歩がてら本屋にいくと、「イキガイについて(生き甲斐について)」というタイトルの本が結構並んでいるに気が付いた。本好きの娘に聞くと、「生き甲斐」という日本語は本の世界では既に定着し、人生をいかに生きるかといった「生き甲斐」論の本が多く出版されているという。

戦後、日本は高性能の家電機材、自動車、ゲームボーイや任天堂などゲーム機器などを輸出してきたが、ここにきて日本人の食生活、生き甲斐について関心が注がれている。生き甲斐をもって健康で長生きするノウハウを発信できれば、日本は世界の人々の幸福に少しは貢献できるのではないか。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年4月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。