ウクライナ政府公式動画で昭和天皇とヒトラーを並べ「ファシズムは打倒された」と投稿した件について、削除・訂正・謝罪がありました。
昭和天皇の部分を訂正し動画再投稿:ウクライナ政府「前のバージョンの誤りを謝罪します」
we will fight ruscism, here and now
✊🇺🇦 pic.twitter.com/V92TT6K7LV— Ukraine / Україна (@Ukraine) 2022年4月24日
Our sincere apologies for making a mistake in the previous version of the video. We had no intention to offend the friendly people of Japan 🇺🇦🇯🇵. In the new video above we have corrected the mistake. https://t.co/rB3RkR6V4k
— Ukraine / Україна (@Ukraine) 2022年4月24日
ウクライナ政府公式Twitterアカウントから4月1日に投稿された動画の一場面で、昭和天皇とヒトラー・ムッソリーニを並べ、更にはプーチンと同列に比較する表現があったことについて、4月24日に多くの日本人から抗議・説明・削除依頼がありました。
私も、歴史的事実からは比較不相当であることから実態に沿う修正をするべきだと説明しました。
外務省からの抗議もありました。
それらを受けて、同日深夜に動画が削除され、修正されたバージョンがUPされました。
ウクライナ政府公式は「前のバージョンのビデオの誤りについて深く謝罪いたします。親愛なる日本人を攻撃する意図はありませんでした。新しいビデオでは誤りを修正しています。」と投稿。
なお、直後のプーチンの顔写真がある場面のテロップ”rashism”が”ruscism”に変更(“racism”と”russia”を掛け合わせた造語か)されているのが分かります。
なお、Instagramのアカウントの方は未だ差し替えが為されていませんが、いずれ修正されると思われます。
Thank you for listening to our arguments.
I’m sorry to bother you, but we would also like to ask you to take action against the videos on your Instagram account.https://t.co/zMZISJSHxl— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2022年4月24日
追記:削除されました。
外務省が対応:佐藤正久議員へのリプライ、中日ウクライナ大使らなどの働きかけ
この問題動画について、外交部会長の佐藤からも、外務省欧州局等に、早急に対応を取るよう申し入れております。 https://t.co/STzuItiNtV
— 佐藤正久 (@SatoMasahisa) 2022年4月24日
Our sincere apologies to @japan for this mistake. We had no intention to offend the friendly people of Japan.
🇺🇦🇯🇵We have corrected it and posted the new video here: https://t.co/dvy7Pyptj3
— Ukraine / Україна (@Ukraine) 2022年4月24日
本件については自民党の佐藤正久議員等が外務省に申し入れをしていました。
そのこともあってか、動画の返信欄での投稿に先立って、佐藤議員のツイートへのリプライにおいて、ウクライナ政府公式の謝罪のツイートがありました。
На цьому кадрі використана фотографія імператора Японії, який не мав відношення до розв’язування війни і фашистської ідеології.Японці дуже ображені, оскільки це не справедливо і не відповідає історичним фактам. Наполегливо просимо виправити.🇯🇵є одним з найбільших наших союзників. pic.twitter.com/7F1sMN4aD1
— セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ特命全権大使 (@KorsunskySergiy) 2022年4月24日
私の抗議も含めて、皆さんの反発を受け、在日ウクライナ大使も訂正を求めています。
訳文:「日本の天皇は戦争扇動とファシズムに関係ない。日本人はとても怒っている。この同一視は不当で、史実を無視している。訂正を強く求める。日本はウクライナの最大の味方の一人だ」と。
早い対応を願います。 https://t.co/SQ1OMPFyGW
— グレンコ アンドリー(新刊「NATOの教訓」増刷決定) (@Gurenko_Andrii) 2022年4月24日
本件に関しては駐日ウクライナ大使のコルスンスキー氏が抗議して訂正を求めるなど、異例の展開を見せています。
在ウクライナの日本人や日系人も抗議していたのをSNSで見かけました。
もっとも、気になる投稿が。
やっと削除されました。抗議は効いたようです。
話を聞いたら、一応、アカウントを実際に管理しているのは政府ではなく、ボランティアのグループなので、政府の公式見解ではありません。
アカウント管理者の勉強不足のせいで多くの方が傷ついた事は残念でなりません。代わりにお詫び申し上げます。 pic.twitter.com/dD2ZKgFiHg
— グレンコ アンドリー(新刊「NATOの教訓」増刷決定) (@Gurenko_Andrii) 2022年4月24日
あまり額面通りに受け取るのは避けますが…
「動画を作っているのはボランティアで、あれは公式見解じゃ無い」というのは、「動画全般のメッセージとは異なり、動画内の一場面の特定人物に関する事実認識や評価は公式見解ではない」ということの可能性は無いのでしょうか?
あのアカウントから発せられる事は公式見解、公式の意思として発せられたものである、という体裁は崩してはならないハズ。
しかし、動画制作を依頼して、その内容の全てが必ず公式見解となるのではなく、チェックが届いてなかった、という事ではないか。
あいちトリエンナーレ2019で昭和天皇の御尊影を燃やして灰を踏みつけるシーンが含まれていた動画(20分以上あったらしい)が展示された例のように、展示そのものの「公式の承認」は得ているけれども、その中の細かい表現の事実関係や評価、主張までもが公式が自己の見解として主張している、ということではない場合は有り得る。
※追記:4月25日10時前に、在日本ウクライナ大使館公式アカウントが「@Ukraineは現在はウクライナ政府とは関係が無い」とツイートしました。
当アカウントは2016年に開設されており、現在ではウクライナ政府と関係がありません。制作者の歴史認識不足と思われます。
— 在日ウクライナ大使館 (@UKRinJPN) 2022年4月25日
上記の「当アカウント」とは、@Ukraineのアカウントを意味します。
— 在日ウクライナ大使館 (@UKRinJPN) 2022年4月25日
ウクライナ政府へのロシア侵略に対抗するための支援と本件の対応について
さて、本件によって「これではウクライナを応援できない」というアカウントが散見されます。しかし、そうした言説は、日本にとっても好ましくありません。
以下の指摘が妥当します。
ウクライナは長年ソ連で、キエフに立つ戦勝記念の巨大な女神像の盾にはソ連国旗のハンマーと鎌が。
この戦争でソ連的なるものと決別が一気に進むので、日本側が上手に働きかければ歴史観も変わるでしょう。https://t.co/pL202vjn60— 木星3 (@tetsulovebird) 2022年4月24日
ウクライナが今戦っているのは、まさにソ連の継承者であるロシア、プーチンであり、ロシア、プーチンを応援するということは、ウクライナがソ連時代の歴史観を持ち続けることを望むということ。
— 木星3 (@tetsulovebird) 2022年4月24日
「ウクライナの勝利と、ソ連、ロシアとの決別こそが、このソ連時代から受け継がれる歴史観を変えるのだ」という認識を広めないといけませんね。
— 木星3 (@tetsulovebird) 2022年4月24日
ウクライナが勝利することが、ソ連時代からのロシアの影響を受けてきた歴史観を転換させることになるハズです。
個人の気持ちレベルで無理に応援するようなことはする必要は無いですが、これを機にロシア側の言説に傾くというのは、日本国のためにならないでしょう。
もちろん、日本側が何もしないで期待だけするのではなく、今回のように根気強く主張していくことが必要だろうと思います。
編集部より:この記事は、Nathan氏のブログ「事実を整える」 2022年4月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。