韓国代表団と岸田首相が会ったことはなぜ正しいか

岸田総理が4月26日、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)次期大統領が派遣した政策協議代表団と総理官邸で面会した。代表団は尹氏の親書を手渡し、岸田総理は日韓関係の改善が急務だとの認識を示した。

岸田首相/尹錫悦韓国次期大統領

これに対して、ニッポン放送「飯田浩司のOK!Cozy up!」で高橋洋一が、「尹政権が発足するまでは会わないのが常識 ~親書を受け取るだけでよかった」と言ったそうだ。

しかし、私は就任前だからこそ会って良かったと思う。就任後なら、徴用工問題(日本企業による裁判所による賠償命令)や慰安婦問題で韓国が先に行動すべきという原則論を言わなくてはならない。

しかし、就任前であれば、正式の会談でないのでそうした原則に拘る必要がないからである。むしろ、就任前の時間こそ、有効に使うべきだ。

私はできることなら、岸田総理は尹錫悦を広島にでも招待して、まったく政治問題は話し合わず、個人的信頼関係の醸成と意思疎通の基礎を創ってはどうかと提案したことがある。

それは実現しなかったが、就任前だからということで非公式で腹蔵なく話し合い、かつ、間接的とはいえ個人的な信頼関係ができたことはよかったと思う。

できれば、この会談を受けて、電話ででもいいから個人的な会話をしておくといい。

わたしは、隣国との関係は、たとえ個別問題で対立しても、それが国民間の憎悪であるとか、首脳間の不信とかにならないにこしたことはないと思う。また、いくつも国と対立すべきでもない。

安倍晋三元総理のときは、米国のトランプ大統領との特別の関係を別にしても、いま馬鹿げた批判の対象になっているがプーチン大統領との頻繁な交流もあったし、習近平主席との関係も悪くなかった。

北朝鮮とは、いくら呼びかけても向こうから反応がなかったのは、核疑惑で米国との関係しか彼らに余裕がなかったからだが、日本側から交流を拒否したわけでない。

韓国については、朴槿恵前大統領とは告げ口外交のときも和解のきっかけを求めて努力がなされ、それが慰安婦についての両国合意に結びついた。

それに対して、文在寅大統領については、非常識の度合いが半端でなく、普通は就任当初だけでも和解に努力する姿勢くらいは示すのに、それすらなかったのだから、任期中は相手にしないという方針に例外的に合理性があった。

しかし、それは例外であると思う。

習近平主席にしても、やはりタイミングをみて国賓としての招待はキャンセルされていないのだから、タイミングを見つけるべきだ。それは、いずれ、行われるべき天皇訪中の地ならしでもある。

そんなもの要らないという人もいるが、日本の皇室に対して中国人が好感を持つことはとても大事なことであることを保守派の一部の人は理解しないとすれば視野が狭すぎる。

ロシアについても、私は 昨今の身も蓋もない対応には賛成しかねる。

しかし、あちこちと関係を悪くしてしまった現実のもとでは、韓国との関係改善もウクライナ紛争以前よりは価値があるものになったのだと思う。日本がロシアとの関係についてあまり頑ななこといっているとロシアも韓国との接近を画策する覚悟も必要だ。釜山にロシアがいることは、ウクライナにアメリカがいるのをロシアが嫌うのと同じくらい回避したいことのはずだ。