写真撮影を禁止するお店、推奨するお店

Seiya Tabuchi/iStock

最近、銀座のミシュラン三つ星店でお寿司を食べる機会がありました。こちらのお店は、店内の写真撮影が禁止でした。

正確に言えば、日本酒のラベルは撮影オーケーですが、お料理や店内の風景はNGです。という訳で、お店のオリジナルの日本酒のボトルの写真を撮らせていただきました(写真)。宮城の伯楽星とコラボレーションしたそうです。

この日は個室だったので、他のお客様には迷惑がかからないのに撮影禁止は何故かと不思議に思い正直に質問してみました。

すると、握りたてを出来るだけ早く食べてほしいこと、そして写真が流出してお料理の真似をするお店が多いことの2つが理由とのことでした。

こちらのお店とは対照的に、北九州戸畑にある照寿司さんは、写真撮影をむしろ推奨しています。店主が積極的に最高のアングルでポーズをとってくれ、携帯の中をお店の写真だらけにしてくれます。

SNSに拡散させることで、世界中に認知度が高まり、お店の経営にプラスと考えているからです。

銀座の店は、おつまみやお寿司のきめ細かなクオリティーが圧倒的で、江戸前のお寿司の伝統を踏まえたすばらしいお食事でした。お料理に集中するだけの価値があると思いました。

一方、照寿司さんはお寿司がおいしいのはもちろんですが、おいしいだけではなく楽しいという要素もあります。

ディズニーランドに行ったり、音楽ライブや観劇で味わうような気分とよく似ています。

どちらの寿司店のアプローチが正しいかには、結論はありません。それぞれの考え方に合うお客様だけが行けば良いと思っています。

銀座の三ツ星店には、派手なパフォーマンスや賑やかさはありません。職人が淡々と仕事をし、出てくる料理だけでカウンターに座った顧客を唸らせます。

こちらは少人数でじっくりと味わうのが良いでしょう。

一方の照寿司さんは、グループで出かけ、貸し切りにしてワイワイ騒ぎながらお寿司を楽しむのが最高のお店です。店主の渡邊さんとのやり取りも楽しく、おいしい食事と極上のエンターテイメントを同時に楽しむことができるのです。

方向性は違えど共通しているのは、顧客に対するホスピタリティーが突き抜けていることです。お店を出るときに、どれだけ満足できるか。その店からはどちらも超一流店と言うことができます。

ただ、撮影禁止のお店が寂しいのは、おいしい食事の翌日に写真を見ながら振り返ることができないことです。脳裏に焼きついた味の記憶を頼りに、余韻に浸ることにします。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年5月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。