ウクライナ戦争の1シナリオ:手負いの熊が核を放つ日

ロシア軍がアゾフスタル製鉄所を攻め落とし東南部の要衝マリウポリを制する一方、東部の一部では反攻を受け撤退していると伝えられており、4月初頭にはあった停戦交渉の兆しは霧消し、ウクライナ戦争は鬩ぎ合いが続いている。

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先が読めない中、筆者は頭の体操としてイマジネーションを膨らませ、今後の帰趨についてプーチンにとっては悲劇的な、そしてバイデン達にとっては最も好ましいであろうという前提でのシナリオを以下の通り考えてみた。

  • ロシアは、東部と南部をある程度確保すれば不十分ながら侵攻目的を達する。
  • 一方、米国バイデン政権と英国、およびジョージ・ソロス氏等左派勢力は、プーチンを失脚させ政権転覆を図りロシアを欧米型で再民主化させたい。
  • そのために、クリミア奪回等、可能な限り開戦以前の状態を超えてロシアを撤退させる。これらを実現させるために、ウクライナ政府に武器供与を際限なく行った。
  • ロシアの戦法、装備は時代遅れであり、欧米の与える対空ミサイルのスティンガーの他、対戦車ミサイルのジャベリン、ドローン、M777榴弾砲等の機動性の高いハイテク兵器の前に苦戦している。欧米の追加武器供与はロシアを更に追い込んで行った。
  • 米英の支援を受け、アゼルバイジャンがナゴルノ・カラバフの完全奪取を狙うとか、アルメニア侵攻を行う動きもあった。
  • 面子の立たない所まで追い込まれて、プーチンは自ら示唆しているように戦術核の使用を行った。(さもなくば、足元が揺らぎそのまま政権転覆に到っただろう)
  • プーチンが核の使用に踏み込んだ事で、NATO諸国の直接参戦の道を開いた。そして、欧州とロシアは核の戦場となった。
  • 戦争は戦術核の使用合戦に留まり、フルバージョンの第三次世界大戦とまでは成らず、米国本土は被害を受けず、英国も被害を免れた。
  • 核戦争を招いたプーチンは、ロシアの被害と制裁、財政難で国内が動揺してクーデターが起こり政権転覆に到った。西側に融和的な新政権が樹立し直ちに終戦交渉を開始した。
  • ゼレンスキーは、国土を奪還した英雄として長期政権を約束された。欧州各国とロシアは荒廃し国力を落した。
  • ロシアの欧米型再民主化が成就し、少なからぬバイデンのウクライナ、中国に関する疑惑は雲散霧消し、プーチンと親密だったトランプの評判は地に落ち、民主党が中間選挙を制しその勢いでバイデンの2期目の大統領選勝利の目も出て来た。
  • ジョージ・ソロス氏は、宿敵ロシアの再民主化を果たし、次なる中国の民主化に思いを馳せる。

実際には長期戦となった場合、西側の経済制裁に対し、エネルギーと食糧輸出を武器として使い返り血を浴びす事の出来るロシアの体力は侮れないだろう。特に後半は、何やらバイデン達にとって酷く楽観的な流れになってしまったが、実際この位の軽さで考えている可能性はかなり高いのではないか。

そして、その軽さによる火遊びは、フルバージョンの第三次世界大戦や結果として中国の世界覇権への道に容易に繋がり得るだろう。

伝えられる戦争犯罪の実態、侵攻に到るロシア系住民保護等の言い分に、ロシア側に如何程の分があるのかは分からぬ。

しかし、これ以上の流血と破壊による悲劇を避けるためには、どこかで西側とプーチンの間で妥協点を見出す以外にはない。世界の想いはその実現に向かわねばならない。

【参考拙稿】「ウクライナ戦争の行方とその後の世界