国際情勢を直視し、岸信夫防衛相は辞任を申し出るべきだ

国防意識の感度の鈍さを証明

国会の委員会で着席のまま答弁するなど、岸防衛相の弱々しい姿を見せつけられるにつけ、日本は激動する国際、軍事情勢を乗り越えられるのかと心配になります。要するに日本の国防意識の感度の鈍さを証明しています。

岸田政権はこの問題の扱いに手を焼いてはいるのでしょう。安倍家と岸家の後継者問題も絡むので、様子見の構えをとっています。国際情勢は日本の政界の思惑と無縁に展開していきます。そうした認識がないのです。

岸信夫防衛大臣 同大臣HPより

安倍氏は退陣後の菅政権発足の際、実弟の岸信夫氏を防衛相に押し込みました。安倍氏も防衛相人事を主導した手前、岸氏に「身を引け」といえば、自らの責任に波及してきます。安倍家と岸家の後継者問題も絡んでいますから、健康状態を理由に簡単には辞められないのでしょうか。

岸氏自身が防衛相の役割の重さを自覚し、自ら辞任を申し出るのがいいと考えます。本人が辞任せず、岸田首相も交代人事に手を付けなければ、「日本の防衛相の軽さ」を世界に印象づけることになります。

「日本の閣僚なんてそんなもので、専門的見識も指導力がある人物は少ない。閣僚がいてもいなくても、そう変わらない」という見方もあるでしょう。もうそんな時代ではない。日米会談で岸防衛相と並んだ米国のオースティン国防長官(元陸軍大将)の迫力には圧倒されました。

日本の閣僚の軽さは変わりなくても、交代人事に踏みきることによって、「防衛相のポストの重みは格段に増している」との認識を示せます。

何十年に一度、激動と流動化が進む世界情勢の中で、健康状態や身体の状況が懸念されている人物が国防相を務めている国まずない。特にロシア、中国、北朝鮮は笑い、日本を見くびっているに違いない。露軍の侵略を受けているウクライナだって心配しているでしょう。

国会会期は6月15日までで、それを乗り越えれば、国民や日本の敵対国に弱々しい姿をさらす機会が減ると、岸田政権は思っているのでしょう。7月10日が投開票日の参院選後に、内閣改造の一環として防衛相を交代させる。そう計算しているとみられています。

野党はどうかというと、弱々しい印象の防衛相の交代を求めているかというと、そうでなさそうです。岸田政権の優柔不断な決断力を見せつけておけば国民は不安になり、参院選を有利に戦えるくらいの意識でしょう。だから野党は政権の座からいつまで経っても遠い。

岸信夫氏は安倍晋太郎、洋子夫妻の3男として1959年に生まれました。次男は晋三氏です。信夫氏は後継者のいなかった岸家に、生後間もなく養子に迎えられたという経緯があります。

岸防衛相については、衆院予算委で特別席に着席のまま答弁したことで、体調不安説が一気に加速しました。それ以前からも「目も虚ろ、舌がもつれる」、「右足をひきずるように杖を使って歩行」「靖国参拝でも杖をついていた」、「よろけて車のトランクに手をついた」など伝えられてきました。

健康状態や身体条件に問題ないというのなら、医師の診断書を公表すべきです。それ前提に「任務に支障はでない」と、岸田政権は表明したらよい。参院選後の改造内閣発足というペースに国際、軍事情勢が合わせてくれると期待しているから、のんびり人事を続けることになるのです。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2022年5月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。