総火演2022 国営仮面ライダーショー:総合火力演習は有害である

28日恒例の陸自の総合火力演習、総火演が行われました。

毎度申しておりますが、国営仮面ライダーショーです。あるいは軍オタや国士様の愛国オナニーのおかずに過ぎない。しかも国民に自衛隊の能力を誤解して伝える可能性があるわけです。やっていることは旧帝国海軍のプロパガンダと同じです。

ぼくも国民が陸自の持つ能力を理解するためのPR活動を否定するわけではありません。ですが総火演はあまりにもコストを掛けすぎ、しかも納税者に過大な期待を持たせるので有害だと思います。

まず、富士学校の業務がほぼ3か月以上止まります。富士学校はそんなに暇なんですか?

コストというと使用される弾薬費の10億円だけでなく間接費用含めれば15億円以上はかかっているでしょう。その間拘束される隊員の時間も、です。10億円もあればそのカネで普通科のプレートキャリアでも導入すべきです。普通科の装備近代化がそれほど嫌ならば腰みのと槍で戦えばいい。

そしてシナリオは我が精強なる無敵皇軍自衛隊が悪の侵略者を見事に討ち取って、というご都合主義です。これが総火演だけならばまだしも通常の演習でも同じです。筋書きあるドラマみたいな演習しても身につくものはありません。演習は自分たちの問題点や欠点を洗い出すためのものですが、陸自では演習すること自体がお仕事になっています。

実際問題陸自は昭和の軍隊であり、それを国民は理解していません。無人機の導入も、ネットワーク化も、普通科の個人装備も圧倒的に遅れています。

10式戦車にしろ、16式機動戦闘車にしろ、ゲリラコマンドウ対処に有用ですと宣伝している割には、RWSはじめ敵の歩兵に対する備えはほとんどありません。

しかも敵の戦車や機甲部隊と交戦する以前に、敵のドローンに探知され、武装ドローンや自爆ドローンや榴弾砲、迫撃砲などの精密誘導砲弾、対戦車ミサイルを搭載した無人車輌などから攻撃を受けて一方的に虐殺されるでしょう。

そして歩兵戦闘車、自走迫撃砲、自走対空車輌は30年前の博物館アイテムで更新も近代化もされず、装軌式73式APCの後継は不整地で使い物にならない96式APCです。備蓄弾薬もお寒い限りです。最新式の19式にしても他国で導入しているような、クルー間でのコミュニケーションができるヘッドセットのようなものは装備していないようです。

すき焼きでいえば、具材であるのは牛肉だけ。その他の具材も調味料もない状態です。更に申せば鍋に穴が空いており、コンロのガスも滞納気味といった状態です。それですき焼きは作れません。

素人目には陸自スゲーでしょう。ですがそれは帝国陸海軍に憧れた軍国少年と同じ目線です。普通の人は上記のように自衛隊がトンデモな軍隊もどきだと思いません。戦前の「FRONT」誌レベルです。

そしてさらに潜むのは自衛隊、特に陸自の隠蔽体質です。19式の携行弾薬数は「敵に手の内を教えないため秘密」とされていますが、砲弾、装薬のキャニスターは外装式であり、容易に携行弾数は割り出せます。こんな素人みたいなことを真面目にいっているわけです。まるで実を守るために鎧兜身につけて、ち○こ丸出し、みたいなものです。自分たちが軍事に関して素人だと宣伝しているようなものです。人民解放軍は笑っているでしょう。

陸自はPKOの日報隠しの問題もありましたが、軍隊の常識で言えば日報を破棄することはありえないわけです。それを破棄したと嘘をついてもバレないと思っていたわけです。

このような日報は後の作戦や派遣の基礎資料ですからそれを破棄するならば無能、税金泥棒呼ばわりされても仕方がありません。

更に申せば自衛隊では隊員のカルテを5年で破棄します。これは民間病院と同じで個人情報保護のためといっていますが、他国の軍隊では半永久的に保存します。

例えばPKOでは帰国後PTSDなどで苦しむ隊員が少なくなりません。遡って派遣された隊員のカルテをチェックできれば、PTSDになりやすい隊員の体質や病歴が分かるかもしれません。であれば初めからそのような隊員は派遣から外すなどの措置もとれるでしょう。自衛隊ではそれができません。

なにか不都合があって訴訟になった時に備えての証拠隠滅ではないかと疑わても仕方ないでしょう。

国営仮面ライダーショー、あるいは軍オタのオナニーのおかずに過ぎない総火演の実施よりも、民主国家失格、中共、北朝鮮レベルの情報開示を向上させて、納税者の議論に必要な情報を提供することが「国軍」としての務めかと思います。

総火演やめて富士学校の合同調査会堂をメディアに公開した方がよほどましです。そうすれば外で通用しない幼稚な発表や業者のレポートまる写しの発表などもなくなるでしょう。

率直に申し上げて、メディアに隠す情報なんかない。それを後生大事に隠して仲間受けする自慰的な発表ばかりするから、軍事の常識と大きくずれても、それが当たり前となっています。外からの監視と評価が必要です。

【本日の市ヶ谷の噂】
川重は欧州向けの航空機の規制クリアのために建設した塗装工場の費用を、シレッと防衛省の仕事に上乗せして請求している、との噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2022年5月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。