ペトロ氏（左）とヘルナンデス氏（右） COLOMBIA, TRUMP COLOMBIANO. 06-06-2022.
左派系の大統領が初めて誕生する可能性が高いと見られていた
5月28日に実施された南米コロンビアでの時期大統領選挙でダークホース的な存在だった「コロンビアのトランプ」と称されている建設業者ロドルフォ・エルナンデス氏（77）が開票結果2位につけ、6月19日の決戦投票で勝利する可能性が高くなっている。
99.99％の開票結果は以下のようになった。
グスタボ・ペトロ 40.32% 8,527,768票
ロドルフォ・ヘルナンデス 28.15% 5,953,209票
フェデリコ・グティエレス 23.91% 5,058,010票
セルヒオ・ファハルド 4.20% 888,585票
グスタボ・ペトロ氏（62）は首都ボゴターの市長や上院議員を務めた政治経験の豊富な左派系の候補者。またゲリラ組織M-19に籍を置いていたこともあった人物だ。
今回の大統領選挙でも勝利がする可能性が最も高いと予測されていた候補者で、コロンビアで初の左派系の大統領が誕生する可能性が高いと見られていた。
ところが、今回の選挙で彼の票が伸びず、前回出馬した時の大統領選挙と比較して僅か50万票が増えただけであった。過半数の票数を獲得できなかったので、上位二人の6月19日の決戦投票となった。
尚、前回の大統領選挙でもペトロ氏は決戦投票で現在のイバン・ドゥケ大統領の前に敗れている。
コロンビアでは常に右派系の人物が大統領になっている
コロンビアという国はこれまで右派系の議員しか大統領に選ばれたことがない。しかし、今回は3度目の正直で左派のペトロ氏が勝利する可能性がこれまで以上に高いとされていた。しかし、ペトロ氏への票数が予想以下の結果に終わったということで、2位のヘルナンデス氏に3位と4位の候補者に投じた票が向かう可能性が高い。
3位のグティエレス氏に投じた票の86％は決戦投票でヘルナンデス候補に向かうと予測されている。ペトロ氏に流れる票は僅か6％と予測されているだけだ。
また4位のファハルド氏の票の63％が同じくヘルナンデス候補に向かうと予測されている。
このような予測から開票後のRCNチャンネルの2回目の世論調査ではヘルナンデス候補が52％、ペトロ候補が44％という予測をしている。（6月1日付「エル・パイス」から引用）。
ヘルナンデス候補はトランプ前大統領のように暴言をよく吐く
企業家ヘルナンデス氏は1971年から建設業で財を成した人物だ。現在、彼の資産は1億ドルと評価されている。一度市長を経験したことのある人物であるが、米国のトランプ前大統領と同じように極右派で暴言を時々はく傾向にある人物だ。例えば、女性が主導権をもって活躍することについて質問された時に彼は「女性がコメントなどすることは良いことだが、それを家庭でやって欲しい。女性が政治などに関与するのは一般の人は好まない」と述べたのである。
この発言が物議を醸し、「ロドルフォ（ヘルナンデス）に票を入れるのはこの国で我々が獲得した女性の権利を後退させるようなものだ。女性へのあしらいにおいて彼は女性嫌いであるというのを我々はこれまでも目撃している」と政治の腐敗撲滅に取り組んでいるフランシア・マルケス氏が語った。（6月1日付「インフォバエ」から引用）。
これまでヘルナンデス氏が票を集めたのはネットを介してである。候補者の討論会には参加していない。討論会に参加して議論するのは彼の得意技ではないというのを彼自身が良く知っているからだ。しかし、決戦投票を控えてペトロ氏との討論は避けることはできない。そこでペトロ氏がどこまで有権者を説得できるかというのが票を伸ばす唯一の方法だ。
米国はコロンビアで左派系の大統領の誕生は望んでいない
コロンビアは南米において米国から最も信頼されている国だ。またコカインが米国に入って来るのを阻止するためにこれまでコロンビアでのコカの栽培を抑えるべく米国は資金面でもコロンビア政府に援助して来ている。このような事情下にあるコロンビアで左派系の大統領が誕生するというのは米国にとっても都合が良くない。
また、一般の市民レベルにおいても隣国のベネズエラが社会主義革命で国家を崩壊させているのを目撃している。同じ左派系のペトロ氏が大統領になるというのは都合が良くないと多くの市民は見ているようで、今回の大統領選挙でも2位から4位までの候補者はいずれも右派系だ。この3人の候補者に投じた票が敢えて左派のペトロ氏に向かう可能性は非常に低い。
だから当初から予測されていたのは、ペトロ氏が1回目の投票で過半数の票数を獲得しない限り大統領に成れる可能性は低いと予測されていた。
