厚労省データ改ざん疑惑:厚労省は信頼回復できる --- 中村 哲也

厚労省が新規陽性者に関するデータを修正した件については、5月19日のアゴラ記事後、大手マスコミも報道する状況となり、ツイッターなどSNS上では、“改ざん”との批判があふれ、検索エンジンで「厚労省」「データ」と打ち込めば「改ざん」がサジェストされるようになった。

BBuilder/iStock

厚労省は、こうした批判を鎮め、信頼回復を急がなければならないが、私は、以下の対応により1週間も要さず、この疑惑を晴らし信頼回復できると考える。

その方法は、今回問題となっているHER-SYSデータやその過去ログ、公表されたグラフや表などのバックデータを匿名化処理したうえで、官民データ活用推進基本法に則り、オープンデータとして公開することだ。

この方法なら、コストも人的資源も殆ど費消しないし、1週間もあれば対応できる。

もし、感染研が、こうしたデータを整理して保有していなければ、研究機関としての存在を問われることになるので、データが存在しないという話はないだろう。

公表の後は、国民参加による諸課題の解決というオープンデータの理念によって、厚労省スタッフの手を煩わせることなく分析がなされ、厚労省の対応が問題なかったことが自ずと明らかになるのではないだろうか。

もちろん批判的な勢力が偏向した分析結果を示すこともあるかもしれないが、その反対勢力により有効に反論されるはずだ。

厚労省がオープンデータとしての公開を躊躇する利用は何一つないのではないか。

以下、政府が、官民データ活用推進基本法に則り決定した「オープンデータ基本指針」の中から、ポイントとなる事項を紹介する。

行政保有データのオープンデータ公開の原則
公共データは国民共有の財産であるとの認識に立ち、政策(法令、予算を含む)の企画・立案の根拠となったデータを含め、各府省庁が保有するデータはすべてオープンデータとして公開することを原則とする。

行政の高度化・効率化
国や地方公共団体においてデータ活用により得られた情報を根拠として政策や施策の企画及び立案が行われることで(EBPM:Evidence Based Policy Making)、効果的かつ効率的な行政の推進につながる。

透明性・信頼の向上
政策立案等に用いられた公共データが公開されることで、国民は政策等に関して十分な分析、判断を行うことが可能になり、行政の透明性、行政に対する国民の信頼が高まる。

以上がオープンデータのポイントだが、詳細は、関連サイトで確認頂きたい。

この対応で、少し気がかりなのは、この法律に基づく生データの公開が、製薬会社との契約上、問題とならないかだ。

昨年、政府は、ワクチンを緊急に確保する必要があったことから、製薬会社にとって、かなり有利な環境の下で締結された契約と言える。

政府筋と外資との契約の危うさについては、20年以上前に話題となった「瑕疵担保条項」が真っ先に頭に浮かぶ。破綻銀行処理の過程で、この条項により多額の国民負担が追加的に生じたと大いに批判された。

契約の詳細については、相手方と秘密保持契約を締結していることから公開されることはなく、その内容をうかがい知ることはできないが、どうしても気になってしまう。

中村 哲也
団体職員(建設分野)