僕は研究者なので、過去に公表した論文、自分の意見の変遷なども常に検証し続けないといけないと考えています。
今回は20年前に書いた第4世代原子炉のトリウム溶融塩原子炉に関する本の書評を自己検証してみようと思います。
20年前、古川和男 (著)「『原発』革命」を読んで、当時「書評の鉄人」28号としてbk1という本のサイトに、本書がテーマにしている「トリウム溶融塩原子炉」に関してかなり否定的な書評を投稿したことを思い出しています。
「トリウム溶融塩原子炉」は、簡単に説明すると、第4世代原子炉の一つで「「溶融塩」と呼ぶ液体に燃料のトリウムやプルトニウムを混ぜた、液体燃料を使う原子炉」のことです。
最近、トリウム溶融塩原子炉を搭載するコンセプト実験船「THOR」がノルウェーで発表されたと知りました。ノルウェーは僕が日立製作所で核燃料の研究をしていたときも、ハルデンという研究所で積極的に原子力の研究をしていたことをおもいだしましたし、共同研究もやっていました。
古川和男 (著)「『原発』革命」の出版から20数年を経ていよいよ次世代SMRの開発へ世の中が動き出したのだと、当時の僕の見識を恥じるとともに、古川氏に謝りたい気持ちでいます。
当時僕は核燃料の研究開発の職を辞して、オーストラリアに移住し、大学のポスドクとして心機一転で余裕がなかったと思います。自分を正当化するために、原子力には少し否定的になっていました。古川氏の推奨するトリウム溶融塩原子炉は、確かに理想的な原子炉だけど、現実社会は軽水炉にも否定的で、ましてや高速増殖炉も相当な風当たりだったのを記憶しています。
自戒の念も込めて、当時の僕の書評を載せ、自分で過去の自分を検証します。当時の書評はhontoという本のサイトに今でも残っています。
「理想の原発と現実社会のギャップ」2002/11/24 14:16
bk1でのオリジナルの書評と今回付け加えた書評全ては、アマゾンの以下のリンクに再掲載しました。
20年ぶりに再読して、トリウム溶融塩原子炉に関する過去の自分を検証しました。 amazonレビュー
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動画のノギタ教授は、豪州クイーンズランド大学・機械鉱山工学部内の日本スペリア電子材料製造研究センター(NS CMEM)で教授・センター長を務めています。