角を立てずに「自分と合わない人」を遠ざける技術

黒坂岳央(くろさか たけを)です。

どこかでチラと見かけた一文に「相性の良い好きな人と盛り上がるより、相性の悪い合わない人と人間関係を構築する前の段階で避けることが重要だ」というものを見かけた。どこで見かけたのか思い出せず、引用できず恐縮だが、これは本質を突く良い言葉だなと感じたので取り上げたい。

marchmeena29/iStock

「合わない人」と付き合う不幸

個人的に考える、人間関係における最大の不幸とは「合わない相手と深く付き合わなければいけないこと」だと思っている。たとえ99人の良好な関係がいても、1人の相性の悪い相手がいることで人はアッサリ不幸になってしまうのだ。

そして厄介なことにどこの職場でも合う人、合わない人がいる(お互いさまではあるが…)。一人でも合わない人がいるだけで、他の同僚と仲が良くてもそれだけで会社に行くのが億劫になるし、YouTuberやブロガーは99人のファンがいても、1人のアンチの心無い言葉で発信をやめてしまうものだ。

実際、筆者は会社員時代に相性の悪い相手でなおかつ、理想的な距離を取れない上司に当たった時はとても苦しい思いをした。仕事内容や残業は気にならないが、一日中、相性の悪い上司と一緒に過ごさなければいけない事に頭を悩ませていた(そのため、上司が出張で不在時はまるで心が弾むような高揚する感覚があった)。

ただ遠ざければ良いというものではない

ただし、合わないからといって、思い切り嫌な顔をして見せるなど露骨な態度を出すことはスマートではない。有名インフルエンサーの中には、「嫌な相手なら、堂々と嫌いであることを伝えればいい」という人もいる。

だが、これは彼らが資本主義社会における強者であり、そのような芸風をすでに受け入れられているからこそできるのであり、一般的に使えるワザではないように思う。特に会社員など、一緒に働く相手を選べない立場の人がこれをすると職場で逃げ場がなくなるし、フリーランスでも太い顧客を多数有するような人でなければ、貴重なクライアントを失ってしまうことになる。

また、どんな立場の人であっても相手から恨みを買ったり、「対応がスマートではなく、子供じみている」と周囲の人間から悪評を買ってしまうのは本意ではないはずだ。

以上の理由から、同じ「遠ざける」にしてもケンカのようにはせず、冷静な大人の対応が望ましい。願わくば人間関係の構築入り口の段階で、相性の悪い相手がこちらを避けてくれるようなシグナルを出す事ができれば理想だろう。そうなれば、お互いに一定のパーソナルスペースを保つことになり、ドライな関係性になる。

合わない人を「上手に」遠ざける技術

では、ここからは個人的に考える「合わない人を上手に遠ざける技術」について取り上げたい。

1. シグナルを出すこと

「自分はこういう気質の人間である」という属性をシグナルで出しておくと良い。リアルの人間関係の自己紹介や、SNSのプロフィール欄に記載しておくことである。ビジネス形態によっては、「価格」がシグナルになっている例もあり、たとえば高級ブランドなどは高額な価格を買ってくれるような顧客の選別をしている。

筆者が運営する英語多読のスクールでは、「この勉強法は自責の思考で、自助努力が出来る人がうまくいく」と伝えるようにしている。その結果、スクールに入会希望してくれるのは、そのような属性ばかりである。これは暗に過剰に依存体質や、他力本願の人を遠ざける効果があると思っている。万が一、合わない気質の人が入会してしまい、結果が出ないとなるとお互いに不幸になってしまうからだ。そのことを事前に回避するためにやっているが、いまのところうまくワークしている。

「自分はこういう人間だ」とシグナルを出しておくと、合わないと感じる人は入り口に入る前に去ってくれるだろう。

2. 対応を深掘りしない。

世の中には自分にとって悪意のない迷惑な人がいる。ここで肝になるのはあくまで「自分にとっては」という点である。つまり、Aさんにとって仲良くなれる人でも、Bさんには迷惑に感じる人もいるということで、要するに相性の問題だ。

筆者個人的には、「あなたの主張はおかしい。返事待っています」や「あなたはAではなくBするべきだ」のような、感情的にこちらの行いを正そうとする「正義マン」がこれにあたる。正義マンは概ね、40代以降の中年男性に多い印象だ。

過去にはYouTube Liveという逃げ場のない場所で、これをされて困ったことがあった。その際は周囲の人も見ているので、冷たい対応を取ってしまうと他の視聴者の雰囲気も悪くなる。それは絶対に避けたかったので、何を言われても「ご意見をありがとうございます。」とだけ対応をし続けた。それ以上、相手の話は一切深掘りしない。事務的かつ表面上な対応で終わらせれば、一応の対応はしているので相手から文句も出づらい。

他の人の目もある場では、相手に恥をかかせて深い恨みを買ったり、雰囲気を悪くしないよう、完全無視、露骨な否定はしないことが肝要である。

世の中には「仲良くなる技術」はたくさんあるが、その逆に「遠ざける技術」はあまり言われていない。だが、この技術はビジネスでも私的な付き合いでも、潜在的なニーズがあるのではないだろうか。少しでも参考になれば幸いである。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。