都心超高級マンションチラシに見える「微妙な変化」

週末になると新聞の折り込み広告のボリュームが一段と増えます。その多くは、都心の高級マンションの販売チラシです。

三井、住友、東急といった大手の不動産販売業者が、都心の中古高級マンションの物件紹介を毎週のように行っています。

今や1億円以下の物件はほとんどなく、ある程度の広さの物件を探すと、2億から3億円が当たり前。普通の仕事をしている人には、すでに手が届かないレベルになっています。購入できるのは給与ではなく、暗号資産や株式からの投資収益、事業の拡大による株式公開、資産家の親の七光り、といった一攫千金の資金を得た人たちに限定されます。

今週入ってきたチラシを見ていると、あることに気が付きました。

それは「価格変更しました」「新価格」「価格改定」といった文字がチラシに目立つようになってきたことです(写真)。

価格を上げるのに、このような表記はしません。価格が変わったことをチラシでアピールしているのは、買い手にとって有利になったということ。つまり、値下げをしているのです。

これまで都心の不動産は、新築・中古に限らず価格上昇が続いてきました。

ところが、ここにきてこのような価格を下げる動きが出てきた背景には、最近の株価や暗号資産の価格下落により、現金が必要になり不動産を売り急ぐ必要のある人が出てきたからではないかと推測します。

このような資産価格の下落は、新たな買い手の数も減少させることになります。そうなれば、超高級マンションの価格は、今後さらにジリジリと下がっていく可能性があると思います。

少なくとも、今までのように売り手市場で、物件がなかなか市場に出回らないといった状況は変わりつつあります。

今回のチラシに見える変化が、これからさらに広がっていくのか。それとも、リスク資産の価格が回復することで、一時的な減少に終わるのか。

金融マーケットが不動産マーケットに与える影響について、注視していこうと思います。

yamasan/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年6月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。