1. 緩やかに増え続ける日本の労働者
前回は、企業規模ごとの労働者数を可視化し、各国と比較してみました。産業ごとの各国共通の傾向があったり、各国特有の特徴があったりととても興味深い結果でした。日本は、先進国では小規模企業で働く労働者は比較的少ない方のようです。
今回は「労働者数」についてもう少しフォーカスしてみましょう。
日本は少子高齢化が進み人口も減少局面に入って久しいですね。働く人の人数はどのような変化をしているのでしょうか?
図1は男女別の労働者数の変化です。
1年勤続者は、同じ企業で1年間働いた人の人数です。民間なので、公務員は除外になります。
日本経済のピークだった1997年と直近の2020年の比較となります。
合計では4530万人から5240万人へと、約700万人も労働者が増加しているようです。人口は減少しているのに、労働者数は大きく増加しているようです。
男性労働者は2860万人から、3080万人と200万人の増加です。一方女性労働者は1670万人から、2170万人と500万人も増加しています。
特に女性労働者の増加が大きいという傾向があるようです。
世代別の労働者の変化を表したのが図2のグラフです。
少子化の影響か、20代が970万人から660万人へと300万人も減少しています。
30~50代はそれぞれ増えていて、60歳以上では500万人から1000万人へと倍増しています。
日本 労働者数 男女合計
1997年→2020年 単位:百万人
9.7→ 6.6 (-3.1) 20代
9.3→ 9.8 (+0.5) 30代
11.4→13.8 (+2.4) 40代
9.8→11.2 (+1.4) 50代
5.0→10.0 (+5.0) 60歳以上
———————————
45.3→52.4 (+7.1) 全体
図3は、給与所得者数の推移を表しています。
黒が合計人数で右軸になりますが、1998年で一度ピークとなり停滞が続いた後、2012年頃から増加傾向です。全体を通してみると、日本の労働者は増え続けている状況です。
年齢別の傾向を見ると2012年以降は、20代、30代が減少傾向が続いていて、40代、50代、60歳以上が増加傾向です。
特に40代は現在最も労働者数の多い年代ですが、増加傾向が頭打ちとなり、そろそろ減少局面に入っていきそうですね。
当然ですが、現在の40代は、10年前の30代です。2012年頃にはすでに30代の減少が進んでいますので、40代も減り始めるころ合いという事がわかりますね。
2. 男性労働者はこれから減っていく?
それでは、男女別に労働者数の推移を眺めてみましょう。
まずは男性からです。
図4が男性労働者数の変化です。
男性の場合は、20代だけでなく30代も減少していますね。40代以上の増加数もそれほど大きくありません。
日本 労働者数 男性
1997年→2020年 単位:百万人
5.5→ 3.6 (-1.9) 20代
6.5→ 6.0 (-0.5) 30代
7.2→ 8.2 (+1.0) 40代
6.2→ 7.0 (+0.8) 50代
3.2→ 5.8 (+2.6) 60歳以上
—————————–
28.6→30.6 (+2.0) 男性合計
図5が男性労働者数の推移です。
図3とおおむね近い傾向ですが、1998年をピークにやや減少に転じているのが特徴的です。近年では高齢労働者の増加もあり、全体としても増加傾向になっています。
世代別にみると、2012年以降は20代、30代で減少傾向、40代、50代、60歳以上で増加傾向ですね。
40代は頭打ちになってきているので、今後は減少が予想されます。50代は増加傾向が続きそうですが、あと10年後には頭打ちになり減少に転じる予想が立ちますね。
20代、30代の減少傾向が続いていますので、その後は一方的に減少していく事が予測されます。
労働者は高齢化しながら、減っていくという事ですね。
ただし、20代はやや下げ止まっているので、どこかのタイミングでバランスが落ち着いてくるのかもしれませんね。
世代ごとの平均給与の変化も見てみましょう。(参考: 豊かになれない日本の労働者)
図6は、世代別の平均給与の推移です。
どの世代も1997年をピークにして、いったん減少、停滞し、近年やや回復傾向です。ただし、コロナ禍でまた減少している様子もわかります。
男性労働者が、1990年代に比べて低所得化しているのが日本経済の最大の課題と思います。
3. 増え続ける女性労働者
続いて、女性労働者についても見ていきましょう。
図7が女性の労働者数の変化です。
20代で減少していますが、30代以上でそれぞれ大きく増加しているのがわかります。
日本 労働者数 女性
1997年→2020年 単位:百万人
4.2→ 2.9 (-1.3) 20代
2.8→ 3.8 (+1.0) 30代
4.1→ 5.5 (+1.4) 40代
3.6→ 5.1 (+1.5) 50代
1.9→ 4.1 (+2.2) 60歳以上
——————————–
16.7→21.7 (+5.0) 女性合計
図8が女性労働者数の推移です。
男性と比較すると、全体的に右肩上がりの傾向ですね。特に興味深いのが、男性では1998年を機に2012年ころまで減少傾向になっているのに対して、女性は2002年以降で増加傾向が強まっています。
直近では2,200万人ほどで、男性に比べると3割ほど少ない状況です。
今までさんざん見てきた通り、1997年が日本経済のピーク(平均給与、1人あたりGDP)で、企業が赤字主体から黒字主体へと変化した転換点です。男性労働者が減り、女性労働者が増え始める転機ともなっているのが興味深いですね。
また、2019年からのコロナ禍を受けて、女性労働者はどの世代でも急激に減少しています。図4の男性労働者(特に40代、50代)の傾向はほとんど変化がないのに対して、顕著な変化があります。女性労働者が経済危機の際の雇用の調整弁となってしまっているように見えます。
図9が世代別の女性労働者の平均給与です。
男性と異なり、世代間の給与差がほとんどなく、ずっと横ばいなのが特徴です。男性と比べると、かなり低い水準ですね。近年やや増加傾向です。
今回は、日本の労働者数の変化に着目してみました。
労働者数は全体としては増えていますが、少子高齢化の影響を受け、若年世代の減少と高齢世代の増加が見て取れます。全体的に労働者が高齢化しているという事になりますね。
また、女性労働者は増加傾向が続いていますが、給与水準が低いという課題がありそうです。もちろん、パートなども含む平均値になりますので、特に女性は低くなりがちという面もあると思います。
今後少しずつ労働者数も減少が見えてくる中で、1人1人がより豊かになれるような仕事とは何でしょうか?
少なくとも今までのように対価の低い仕事を、人数や時間をかけてカバーするという仕事観では成立しなくなっていくと思います。
今後も日本は人口減少が続き、現役世代の減少と共に全人口に対する現役世代の割合は低下を続けていくと予想されています。
「自動化していく仕事」と、「価値を高めていくべき人にしかできない仕事」に分かれていくのではないでしょうか。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2022年6月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。