人生120年時代へ、挑戦しながら「堂々と老いる」と誓う

田原総一朗です。

6月9日、石原慎太郎さんのお別れの会に参列した。石原さんは海とヨットを愛した。祭壇はたくさんの青と白の花で、まさに海のように彩られ、その両端にはヨットの帆が飾られた。

石原さんとの付き合いは、ほんとうに長かった。そして多くの刺激をいただいた。僕はあらためて心の中で、感謝と、そして、「石原さんの分まで、僕はまだまだ日本のために闘う」と伝えた。

6月4日には83歳の海洋冒険家・堀江謙一さんが、ヨットで単独無寄港太平洋横断に成功した。ものすごい気力と体力だと思う。ヨット好きの石原さんがご存命だったら、さぞ興奮し、喜んだだろう。僕も同じ80代。励みになったし、何よりとてもワクワクした。

堀江さんは、「今、青春まっただ中」「生涯チャレンジャーでありたい」と語った。とてもいい言葉だ。肉体の衰えはあるけれども、精神はいつも「青春」でよいのだ。僕もいつも「今が一番若い」と考えているし、そして「挑戦し続ける」と誓っている。

以前、京都大学の山中伸弥教授に取材した。再生医療によって今後10年くらいで、多くの病気は克服できるようになり、「人間の平均寿命は、120歳くらいになるのではないか」と山中教授は語っていた。

であれば、これからの時代、今までは「老後」とされていた、70、80代以降の生き方が、ますます大切になってくると思う。僕自身を振り返れば、耳が遠くなり、滑舌が悪くなり、言葉が出てこない……。たしかに、こうした衰えは避けようがない。

しかし、マイナスばかりを見ていても仕方がない。自分の別の武器を探すことだ。僕の場合、それは、「当事者に直接会って、一次情報を得る」ことだと考えている。聞きづらかったりするのは申し訳ないが、それを上回るような、視聴者が納得できる確かな情報を伝える――。これが僕のモットーだ。

また、今後ますます高齢化が進む日本で、僕のような高齢者が、現役で働くのも自然な姿だと、お伝えできるのではないかとも思っている。身体能力の衰えは、みんながいずれ通る道なのである。

60代で定年退職し、「孤独になった」と落ち込んだり、欝々としている人は多い。また、パートナーに先立たれ、ひきこもりのようになってしまった人もいる。なんと、もったいないことか。

僕も病気で生きる気力を失くしたことがある。妻にも先立たれたので、こういう方たちの状態は想像できる。僕の場合は仕事に救われた。今「孤独」を感じている方は、すぐには難しいかもしれないが、「孤独」を、縛るもののない「自由」だと捉えてみてはどうだろう。

朝から映画を見ようが、ふらりと旅をするのもすべて自由だ。僕の知り合いに、70代でバレエを習い始めた女性や、家庭菜園を始めた方がいる。萩本欽一さんは70代で大学生になった。

趣味だけでなく、仕事を持つ、あるいは、ボランティアに参加してみるのもいいだろう。僕の77歳になる弟は、地域の清掃や子どもの見守りなど、ボランティア活動で忙しいらしい。

何歳になっても人生を楽しむ、ヒントのようなものになればと、僕は昨年末、『堂々と老いる』という本を出版した。これまで200冊以上の本を出してきたが、自分に、そして「老い」に向き合った本は、これが初めてだ。87歳の初挑戦、なかなかいいじゃないか、と思っている。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2022年6月17日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。