まとまれない立憲民主党、だから君は与党になれない

立民は変わったのか?

昨年の衆院選での敗北を受けて、立憲民主党は枝野体制から泉体制に移行し、再起を図ろうとした。その中で、衆院選の反省であった共産党との関係性の見直し、旧民主党の負のイメージの刷新などを通して、責任ある野党第一党として生まれ変わることが期待された。

だが、二つの要因が重なり変革できないでいる。ひとつが党内のまとまりのなさである。自民党の場合、右は山谷えりこ氏から左は野田聖子氏まで多様な思想、主張を持った人々を内包する懐の深い党という一面がある。そして、権力という共通の目標については意見の相異を乗り越え、鋼の結束力を見せる。

一方、立民の場合、自民のように権力に対する執着心は比べ物にならないぐらい弱い。先日、街頭演説で小川淳也政調会長が共産党との連携を主張し、応援に駆け付けてもらっていた候補者から否定された事例がある。この件が示唆するように、議員が党利党略を度外視して、自分の言いたいことだけを言ってしまう党内状況があり、共産党との連携という党の命運にかかわる問題についてコンセンサスが取れていないと推測される。

また、立民は多様性を重視するリベラルな政党を自認しているわりには、異なる政策主張を認める意見の多様性に欠けているという声もある。

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泉代表を支えるはずのベテラン議員も公然と執行部批判をしている。このようにまとまりが欠けている党に政権を明け渡そうと世論は思わない。

立憲民主党 泉健太代表 同党HPより

左派の影響力が強い党内

二つ目の障壁は依然として党内左派の影響力である。泉新代表が誕生してから、批判ばかりではなく提案型の党としての立民をアピールし、外交防衛に関しては現実主義的な姿勢を取ろうとする努力がみられた。

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しかし、依然として世論に受けない外交安保政策を左派が党に押し付けている節がある。それは基本政策集に書かれている、安保法制についての対処の仕方から推察される。

立憲主義と平和主義に基づき、安保法制の違憲部分を廃止するなど必要な措置を講じます。

この一文は実質的には何も言ってないに等しい。安保法制は集団的自衛権の限定行使容認を法律に反映させるために法制化された。つまり、左派が批判する集団的自衛権の行使容認こそが安保法制の根幹であり、違憲といわれる部分が取り除かれたならば、安保法制は有名無実と化してしまう。

しかし、「違憲部分は」と留保を付けることで、必ずしも全て反対ではないという解釈の余地を残して安保法制支持者からの支持を集めようとする魂胆が透けて見える。だが、そのようなレトリックを駆使して、左派が嫌がる防衛論議をしないことが今の立民の限界である。

日本人は外国の無謬性を信奉し、日本が非武装化さえすれば世界は即座に平和になるという左派が掲げる空想的平和主義をことごとく否定してきた。左派が努力の結晶とされる1960年の岸内閣退陣の直後の衆院選では自民党は大勝し、1993年に自民党が分裂するまで政権を担当することもできなかった。これらの歴史が示すように、内政において左派的であっても、外交安保政策までそれに染まってしまえば、国民はなかなか信託してくれない。

立民は変わりたいのか?

立民が万年野党で安住したければ、上記の政権公約で使用した玉虫色のレトリックで、国民の生命、財産の保護に直結する問題の議論を避けたらよい。でも。与党になりたいなれば、左派が好むポジショントークをやめ、同時に左派の影響が色濃く反映されている外交安保政策を撤回せねばならない。

そして、国民民主党と大同団結して、再び国民から期待されていた2009年以前の民主党に回帰するぐらいの心づもりが求められる。しかし、党がまとまらない限りはそのような未来は程遠く、現状を見る限りは一致団結する姿勢が見られない。