コロンビアで初の左派系大統領が誕生した衝撃:南米の米国牙城が崩れるとき

元ゲリラ戦闘員が8月から大統領になる

6月19日に行われたコロンビアの大統領決戦投票で初めて左派系の大統領が誕生することが決まった。コロンビアはこれまで保守党か自由党の大統領が続いて来た。

左派系の大統領の登場は一度もなかった。しかも、選ばれたグスタボ・ペトロ氏(62)は元ゲリラ組織M-19の戦闘員でもあったという前科の持ち主だ。

しかし、議員としての経歴は十分に積んでおり、ボゴターの市長や上院議員を務めた人物で、今回が大統領選3度目の挑戦であった。対立候補だった「コロンビアのトランプ」と称されたロドルフォ・エルナンデス氏(77)と比較して議員のとしての実績は遥かに上回っている。

しかも、ペトロ氏とペアーを組んで副大統領として立候補していた黒人女性フランシア・マルケス氏は環境保護活動を積極的に推進して来た女性である。また黒人が副大統領となるのもコロンビアの政界で初めてのことである。

社会の不平等が一挙に爆発して左派系の候補者の勝利となった

決戦投票に臨んだ両者の獲得票は以下の通りである。

  • グスタボ・ペトロ      11,281,013 (50.44%)
  • ロドルフォ・エリナンデス  10,580,412 (47.31%)

左派系の候補者が勝利した背景にはコロンビアでも長年右派系の大統領の政権運営が続いて来たが、社会の不平等は一向に解決されないでいる。

エスタブリシュメントの政治支配の影響で2019年には若者が中心となって抗議デモが発生。昨年も主要都市で抗議活動が活発化し死者も出ている。

人口5100万人のコロンビアで今も貧困者が40%近くを占めているということが社会の不平等を如実に語っている。

コロンビアで左派系の大統領が初めて誕生することになってわけであるが、ラテンアメリカでは左派系の大統領が続々登場している。

アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス、メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール、ボリビアのルイス・アルセ、ペルーのペドロ・カスティーリョ、チリのガブリエル・ボリックという具合だ。そしてブラジルでも今年10月に予定されている大統領選で左派のルラ元大統領が再選される可能性が高い。

しかし、アルベルト・フェルナンデスとペドロカスティーリョの両大統領の国民からの人気は既に大きく後退している。

左派系の政権誕生に米国が強い不安をもっている

ところが、今回の選挙結果に強い不安を持っているのが米国である。これまで米国にとって長年続いた右派政権のコロンビアは南米で最も信頼の厚い国とされている。更に、コロンビアはコカの栽培国として良く知られている国で、米国はこの撲滅に軍事的にもコロンビア政府と協力して来た。また経済的にも強い絆で結ばれている。2000年からこれまで米国は130億ドルの資金を提供している。(6月19日付[ペルフィル]から引用)。

米国の8月に発足するコロンビア新政権への不安を如実に示している一つの例として上院議員リック・スコット氏が次のように発言したことである。「元ゲリラ戦闘員に委ねる政府は社会主義者の主義主張のもと重大な弊害をもたらすことになる。よって、これまでの政治面また商業面における親密な関係による米国からの支援は得られなくなるであろう」と同氏が述べたことである。

米国にとってコロンビアは南米における米国の牙城のようなものである。それが8月から一挙に崩れる可能性が生まれている。