非正規労働ばかり増える日本

小川製作所

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1. 非正規労働者の増加する日本

前回は、民間給与実態統計調査より、男女別、世代別に日本の労働者数の変化を見てみました。

日本は女性や高齢の労働者が増え、2012年以降緩やかに全体の労働者数が増加しています。一方で、給与総額がそれほど増えず、各世代では1997年のピークの平均給与も超えられていない状況が続いています。

また、30代の労働者が減少していて、40代も今後減少が予想されます。今後は徐々に高齢化しつつ、減少局面に入っていく事になりそうです。

今回は、別の角度から、労働者の雇用形態別の変化を見てみましょう。参考にする統計データは「就業構造基本調査」です。

有業者数 男女合計 推移

図1 有業者数 男女合計 推移
出典:就業構造基本調査 より

図1が日本の「有業者数」の推移です。

従業員数、従業者数、常用雇用者数、就業者数など、日本のデータは統計によって労働者の呼び方や定義が異なるのでわかりにくいですね。

今回は、従業員や職員だけではなく、経営者も入るので有業者という呼び名なのかもしれません。また、今回のデータには公務員も含まれるものと思います。当ブログでは、経営者も給与を受け取り経営という労働をしている存在なので、労働者という括りに入れます。

日本の場合、全体として6500万人ほどの労働者がいることになります。傾向としては、自営業主及び家族従業者が徐々に減っていき、パート、アルバイトや派遣社員などの非正規雇用が増えているようです。

また、正規職員・従業員も1997年をピークにして、徐々に減少しています。1997年は、平均給与やGDPでもピークとなり、その後の停滞の起点となった年ですね。

図2 有業者数 男女合計 1997年・2017年
出典:就業構造基本調査 より

図2が1997年と2017年のシェアを表したものです。

正規職員・従業員や自営業主、家族従業者のシェアが低下して、パート、アルバイト、契約社員などのシェアが増加しています。このような非正規雇用は、1997年に19%程度でしたが、2017年には32%程度にまで増大しています。

前回も見た通り、この間男性の現役世代が減少し、女性や高齢の労働者が増加しています。

2. 正社員が多い男性労働者

それでは、男女別でもデータを見ていきましょう。

有業者数 男性 推移

図3 有業者数 推移 男性
出典:就業構造基本調査 より

図3が男性労働者の推移です。

全体としては1997年をピークにして減少していますね。正規職員・従業員も1997年をピークに減少しています。自営業主も徐々に減少していますが、その代わりパート・アルバイト、契約社員などが増えています。

図4 有業者数 男性 1997年・2017年
出典:就業構造基本調査 より

図4が1997年と2017年のシェアの比較です。

1997年には正規職員・従業員のシェアが68%ですが、2017年には63%と減少しています。その代わり、パート・アルバイトなどの非正規労働者のシェアは、8%程度から18%程度へと倍増していますね。

非正規労働者は女性にフォーカスされがちですが、男性でも増加しているようです。もちろん高齢労働者で非正規雇用の増加が多いようですが、若年世代でも増えているようです。

世代ごとの雇用形態別有業者数については、次回詳細に取り上げます。

3. 非正規ばかりが増える女性労働者

続いて女性労働者についても見ていきましょう。

有業者数 女性 推移

図5 有業者数 推移 女性
出典:就業構造基本調査 より

図5が女性労働者の推移です。男性よりも顕著な変化が見られますね。

まず、全体としては増加傾向が続いていますが、その内訳を見ると、家族従業者が大きく減少していて、1980年代からパート、アルバイトなどが急増しています。

正規職員・従業員は1970年代からほぼ一定ですね。正規職員・従業員の枠が変わらず、非正規雇用が一方的に増えている印象です。

1997年からの変化を見ると、自営業主及び家族従業者が約300万人減少、正規職員・従業員が約100万人減少して、非正規労働者が約500万人増加しています。

家族従業者が非正規労働者に置き換わったような面もありそうですが、それ以上に更に増加が続いているようです。

図6 有業者数 女性 1997年・2017年
就業構造基本調査 より

図6が女性のグラフです。

家族従業者をどのように考えるかで異なりますが、ここでは正規従業員と同等ととらえます。もちろん、無給の従業者なども存在し、非正規雇用に近い側面もあると思います。

1997年には、パート・アルバイトなどの非正規雇用は33%程(家族従業者を合わせると45%)でしたが、2017年には50%(家族従業者を合わせると53%)に増加しています。

パートやアルバイトの増加も大きいですが、契約社員が5ポイント、派遣社員が3ポイント、嘱託が2ポイントといずれも大きく増加しているのも特徴的ですね。

今回は雇用形態別の労働者数の変化について着目してみました。

女性や高齢労働者が増加する中で、非正規雇用の労働者が大きく増加しているようです。
正規職員・従業員についてはむしろ減少していますね。

ちょうどバブル崩壊の1990や1997年あたりを転換点として、労働形態の構成も大きく変化を始めたように見受けられます。

若年世代から労働人口が減っていく中で、1人あたりの生産性と対価を向上させて対応していくのが本来の姿と思います。

しかし、日本で起こっているのは、安い仕事を安いままにして、それを安い労働力で賄おうという逆の方向性のように見えます。

今後本格的に人口減少が進み、特に働き盛りの40代が減っていきます。このようなビジネス観のままだと、一層労働者も困窮していきますね。

投資により生産性を向上させ、より少ない労働者でも成立する経済が必要になると思います。そして、働く人がより豊かになっていく社会が必要ですね。

皆さんはどのように考えますか?

 


編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2022年7月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。