足かせになる希望退職

中小零細企業であれば、辞めさせたい社員に対して不当な異動や配置転換、降格などをおこない自主退職に追い込むことが可能です。ところが大手企業でそれをやってしまうと企業の評判に関わってきます。SNSにネガティブな情報が流れたらイメージダウンです。

Wako Megumi/iStock

そのため、企業が人を減らすときにはリストラの一環として希望退職を集うのが一般的です。しかし、希望退職を集うと会社が辞めさせたい人が応募するとは限りません。むしろ、他の会社で通用する有能な人が応募してくることが多いのです。

優秀な人が転職先を見つけることは容易でしょう。さらに、いま退職するなら多くの退職金がもらえるのです。だったら、いまやめて退職金をもらって次に移ろうと考えるでしょう。そのため希望退職をおこなうと優秀な人から退職していきます。

希望退職の実施後は会社に有能な人が残らないことから、会社としての能力値は下がっていきます。希望退職をおこなったあとの会社はいろいろな意味で厳しくなるのです。

正社員を採用してもクビが切れないし、希望退職の募集をかけても優秀な人が辞めてしまい残ったのは無能な正社員ばかりだったなんてことも少なくないわけです。だったらその代わりは非正規や派遣で十分という発想になったとしても不思議ではありません。

派遣会社は働いている人の給料の中抜きをすることで利潤を稼いでいるビジネスモデルです。だから、派遣の人の給料は固定化されています。結果的に中抜きをして人材派遣をしている会社だけが潤う仕組みともいえます。

つぎに、労働関連でよく議論になる「同一労働同一賃金」についても考えてみましょう。

同一労働同一賃金も実現は困難

「同一労働同一賃金」とは、パート社員、契約社員、派遣社員について、正社員と比較して不合理な待遇差を設けることを禁止する制度のことを指します。

しかし、非正社員の賃金が改善されると、派遣する企業(派遣会社)の利益は下がります。賃金アップ分を派遣先に転嫁しなければいけませんが、派遣先(派遣会社の顧客)からすれば負担が増すのでメリットがありません。交渉が難航すれば派遣打ち切りにつながります。派遣会社からすれば受注機会を逸することになりますので大きな問題です。

「同一労働同一賃金」は、人事部で人事制度の策定等に着手した経験のある人にとっては、如何に難しいことか分かるはずです。日本企業の多くは職能資格制度を導入しています。能力+社会年齢+役職で処遇が決まることが多いので、ホワイトカラーにおいては仕事の定量化・定性化が困難なのです。

また、「同一労働同一賃金」を導入する企業は、総人件費圧縮を目標にするはずです。総人件費がアップするなら現行制度を変える必要性は見当たらなくなります。総人件費が変わらない場合、正社員の給料が下がり、非正規の給料がアップすることになるでしょう。しかし、正社員の不利益変更になりますから労組が受け入れるはずがありません。

非正規の給料をアップするには、企業の総人件費が現行よりも増えることを覚悟しなければなりません。しかし総人件費のアップは企業経営を圧迫します。いつまでたっても議論が進まないのはこのためです。同一労働同一賃金の実現には高いハードルが存在します。

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