日本の「NATO」加盟は中・露・北 に対する強力な抑止力になる

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NATO(北大西洋条約機構)とは何か

NATO(北大西洋条約機構)は、米・英・仏・独など、米国およびヨーロッパの自由民主主義諸国が加盟している「集団防衛体制(軍事同盟)」である。NATOは第二次大戦後の1949年に旧ソ連に対抗するために米英を中心として設立された。NATOの本部はベルギーのブリュッセルにある。

NATOは集団防衛・危機管理・協調的安全保障の三つを中核的任務とし、加盟国の領土及び国民を防衛することを最大の責務としている。加盟国は外部からの攻撃に対して相互防衛に合意し、集団防衛のシステムを構成している。現在の加盟国は30か国に達している。

NATOの強力な「抑止力」

NATO設立後、これまで加盟国が外部から侵略された事例は皆無であり、NATOは「集団防衛」すなわち国連憲章第51条の集団的自衛権に基づく強力な「抑止力」を保有している。今回のロシアによるウクライナ侵略も、仮に、ウクライナがNATO加盟国であったならば、起こり得なかったと言える。

なぜなら、ロシアは、多数のNATO加盟国を敵に回すことになり、米英仏独など30か国の核戦力を含む強力な軍事力にはロシア一国では到底対抗できないことは明らかだからである。

仮に、ロシアがNATO加盟国であるウクライナを侵略した場合は、当然米国をはじめNATO諸国から「集団防衛(集団的自衛権)」に基づく反撃を受け、ロシアの戦争目的の達成は不可能または著しく困難である。これはロシアに対する強力な「抑止力」になる。

NATOの「抑止力」は、ロシアだけではなく中国、北朝鮮に対しても極めて有効である。なぜなら、中国および北朝鮮の通常戦力及び核戦力は明らかにNATOに劣るからである。最近、中国および北朝鮮はNATOのアジア地域への拡大である「アジア版NATO」構想の動きを「冷戦思考」だとして厳しく批判しているが、これはアジア地域におけるNATOの集団防衛体制確立を恐れる両国の危機感と警戒感の表れである。

将来、台湾や韓国がNATOに加盟すれば、「台湾有事」や「朝鮮半島有事」は強力に抑止されることは確実である。

日本のNATO加盟の可能性

日本はNATOとグローバル・パートナーというNATOの域外協力国としての協力関係にある。すなわち、日本とNATOは自由と民主主義の価値観を共有するパートナーとして、サイバー、海洋安全保障、人道支援、災害救援、危機管理など、国際協力分野における協力を重ねている。日本はベルギー・ブリュッセルにNATO日本政府代表部を設置している。

しかし、日本は正式な加盟国ではないため、他国から武力攻撃されてもNATOによる集団防衛の恩恵を受けることはできない。NATOに加盟するためには、北大西洋条約第5条の「NATO加盟国に対する武力攻撃は、すべての加盟国に対する攻撃とみなす」ことに同意する必要がある。すなわち、他国間の戦争に参戦する義務が生じる。これは全面的な集団的自衛権行使を意味するから憲法9条や「専守防衛」に抵触する可能性がある。

日本がこれをクリアーするためには、憲法9条2項の「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない。」に加えて、第3項として「前項の規定は、個別的及び集団的自衛権の行使のための戦力の保持及び行使を妨げない。」と追加改正すればよい。

この改正は自民党が主張する名目的形式的な「自衛隊明記」の改正よりも、日本の安全保障にとって遥かに有益である。なぜなら、この改正によって日本はNATOへの加盟が可能となり、核共有や核保有をしなくても、NATOの核を含む強力な「抑止力」の恩恵を受けることになるからである。

日本のNATO加盟による強力な「抑止力」獲得

以上の通り、日本はNATOへの加盟により中国・ロシア・北朝鮮に対して核を含む強力な「抑止力」を獲得することが明らかである。「尖閣有事」「沖縄有事」の抑止にも極めて有効である。

したがって、日本は、今後、盤石な安全保障体制を確立するために、憲法改正を含め、与野党を超えてNATOへの加盟を実現するためのNATOとの外交交渉に全力を傾注すべきである。