日本でも貧富の差がこれから益々拡大すると思う「3つの理由」

アメリカなどの諸外国と比べ貧富の差が小さく、「最も成功した社会主義国」と揶揄されてきた日本ですが、既に過去のものとなっています。そしてこれから更に経済的な格差が広がる社会になっていくと予想します。

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経済格差が広がる1つ目の理由は「インフレ」です。インフレとは貨幣の価値が下落していくことです。日本でも今後インフレが顕在化すれば、預金だけで資産を保有している多くの日本人の資産は、実質的に減っていき、株式や不動産などのリスク資産を保有している人たちとの格差が広がります。

株式相場は今年に入ってからは軟調で投資をしても資産は増えないと思うかもしれません。しかし、長期的には預金よりは高いリターンが実現することは、過去のデータから実証されています。

2つ目の理由は「円安」です。インフレと同じように、円安によって円の価値は下落していきます。日本人の個人金融資産の90%以上は円資産に偏っています。円安によって、外貨資産を保有している人と、円資産しか持っていない人の資産格差が広がっていくのです。

3つ目の理由は「仕事の付加価値」です。付加価値とは希少性のことです。

どんな仕事をしているかによって、これからの収入格差は更に広がります。誰でもできる仕事、経験を積んでもスキルアップにつながらない仕事をやっている人は、残念ながら収入をアップさせることができません。

付加価値の低い単純労働は、簡単に他の人に代替されてしまいます。その結果、労働力の価格競争に巻き込まれます。労働力が不足しない限り、賃金の上昇にはつながりません。

一方で、グローバルに通用する限られた人にしかできない希少性のある仕事であれば、収入は海外と同じ水準を維持することができます。海外で賃金がアップすればその恩恵を受けられますし、そもそも円安になれば、円ベースでの賃金は上がることになります。

経済格差の話をすると、必ず経済的な豊かさが人生の全てではないなどと言いだす人がいます。しかし、それは経済的に豊かになってから言うようにしたいものです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年7月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。