積極的に動くべきではない「人生の3つのタイミング」

黒坂岳央です。

人は感情を持つ動物である。それ故にコンピューターのように、常に同じ判断を下すとは限らない。その時の感情によっては、むしろ積極的に行動してはいけないタイミングがあると思っている。そのことで筆者個人的に過去に痛い目を見た経験があり、今は絶対にしないようにしている。

具体的に論考したい。

SIphotography/iStock

深酒の時

酒は人を狂わせる。「それは違う。狂った人間が酒の力で本来の愚かさを露呈するに過ぎない」という人もいる。だが、それでも平常時には理性というブレーキでおかしくない振る舞いができているわけで、狂気を開放するきっかけが酒であるというなら、やはり酒は人を狂わせるという理屈は通る。

過去に深酒が理由で人生を一発退場した人物をこれまでかなり見てきた。会社員時代に、飲み会でイッキ飲みを繰り返し、泥酔状態になった勢いで上司に攻撃的に絡んだ同僚がいた。その結果、彼は上司の怒りを買い、出世コースを外れて遠方の小さな支店へと飛ばされてしまった。また、他の事例でも飲酒運転事故を起こして牢屋に入った親族もいるし、セクハラやパワハラで会社をクビになった人たちも見てきた。先日の尼崎USBメモリ紛失事件も、酒が絡んだものであった。

個人的には「お酒」に対して、昔からあまりポジティブな感覚がない。「お酒はおいしい」「お酒はコミュニケーションを円滑にする」という人もいるが、お酒よりおいしいと感じるものは世の中にはたくさんあるし、酒の力を借りねばまともにコミュニケーションが成り立たないというなら、そもそもシラフ時の本人のコミュニケーション力をもっと高める努力をするべきではないだろうか。

深酒のタイミングでは動くべきではない。誰かとコミュニケーションを取ったり、重要な人生の選択をするのは控えるべきだ。気分が高揚し活動的になると、それがよい結果をもたらす可能性は低い。

激しい怒りや恐怖を感じている時

激しく怒っている時や、強い不安を感じているタイミングは絶対に意思決定をするべきではない。なぜなら目先の小さな損失を埋めるために、取り返しのつかないより大きく損失を出してしまう可能性が高いからである。

会社員時代に、怒りから社内で部下を激しく叱りつけた中年男性がいた。筆者の眼前でその怒りはぶちまけられたのだが、その後、相手から恨みを買ってしまった。社内外でパワハラとして告発されたことで、彼は課長職を失うどころかあわや「解雇寸前」になった(その後はすっかり大人しく振る舞うようになった)。

また、筆者が金融投資の駆け出しのタイミングでは、大きくはった銘柄が一瞬で暴落し、慌てて底値付近で売却。その後は大きく反発してしまい、悔しくて眠れないほどの雪辱を味わった経験もある(この経験は後に大いに役に立った)。

多くの人は怒りや不安を感じている時、問題を解決するのではなく、我が身に起きている目先の怒りや不安を解消することを優先する。そして殆どの場合において、その行動の結果は自身に対して不利に働く。怒りで相手を叱りつければ社会的な敗北は必至である。

また、不安や恐怖を感じると、1秒でも早くそこから救済される選択肢を取ってしまいがちだ。たとえば、マーケティング手法を悪用する人の中には、顧客を強い不安で揺さぶり、次にその不安を解消するための自社製品を勧めて買わせようとする人もいる。

感情が大きくネガティブに傾いているタイミングでは、意思決定はせずに「一旦、保留する」という選択肢を取るべきだ。口論をして腹が立ったなら、一旦その場から離れた方がいい。コールセンターなどでも、激しいクレーム顧客は時間をおいて折り返し電話すると落ち着くものだ。人間は一旦、時間を置くことで感情が落ち着き、冷静になれる。そのタイミングで改めて再考するのが良いだろう。

有頂天になっている時

その逆にオーバーポジティブになっている時も要注意である。不測の大事故は有頂天になっている時によく起きる。

過去にテレビ番組のアナウンサーが、番組を盛り上げようと田んぼに頭から飛び込みその結果半身不随になった事件が起きた。彼は泥だらけの中、泥の中で呼吸ができず、体が動かない恐怖を味わっていたはずだ。それを想像するだけで息をするのが苦しくなるほど恐ろしい。一瞬の気持ちの高ぶりは、一生を棒に振るような事故に繋がりかねないのだ。

筆者の身近な人物にも似たような状況に陥った人がいる。その人物の知能レベルは日本の人口上位トップ1%に入っており、超が付くエリート道をひた走っていた。また、頭が良いだけでなくユーモアや音楽の才能にも優れ、非の打ち所がないまさしく「天才」といって差し支えない人物だった。

ある時、T大博士課程を終える直前のタイミングで、その場を盛り上げるために頭から風呂に飛び込んだ。そして悲劇はここからはじまる。お風呂は本人が想像するよりも浅く、頸髄損傷で体が麻痺状態。その事故で翌日から、首から下がほとんど動かせなくなったのである。現在は事故から10年以上経過するが、今も状況はほとんど変わらずリハビリを続けているが元の生活は永遠に戻ってこなくなった。

人生は一寸先は闇である。1秒後の未来は誰にもわからない。だが、危険度は常に一定ではない。本稿で取り上げたタイミングにおいては、そのクライシスレベルは急激に高まる。失敗の質によっては、後からどうやってもやり直しの効かない悔やみきれない禍根になり得る。それ故にこうした状況下においては、無闇に活動的になるべきではないだろう。

 

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