こんにちは、医師&医療経済ジャーナリストの森田です。
夏に入って新型コロナの感染拡大が続いていますね。7月14日現在、検査陽性者は東京で1万人を超え、僕の住んでいる鹿児島では過去最多の1500人超えを記録しています。
心配ですね…。でももうコロナ禍も3年目、慌てず統計を見てましょう。
実は毎年、夏に感染の山が来てるんですよね。一昨年は8月10日前後、去年は8月20日前後に感染のピークが来ていたことがわかります。
今年も例年通りだとするとお盆前後で感染のピークが来るのかもしれません。となると、あと一ヶ月ほどは感染者が増える?ことになります。
ただ、オミクロン株の弱毒化を経験した我々はもう、単に検査陽性者数が増えるとか、感染者数が増えるとかで怖がる必要はないでしょう。
そう、問題は「重症化リスク」です。
では、BA.5の重症化リスクはどうなのでしょうか?
昨日、こんなニュースがツイッターのトレンドに入っていました。
ハムスターを使った実験の結果、BA.5の方が、BA.2よりも肺で増えやすく、病原性と重症度が高くなっているということがわかった。BA.5は、肺でも増えやすく、重症化リスクが高い可能性がある。
とのこと。
心配ですね…。でももうコロナ禍も3年目、慌てず統計を見てましょう。
実はまだ日本では流行したての新しい株なので、しっかりした統計データが出ていません。
でも、外国のデータはあります。例えば、すでにBA.4とBA.5 がコロナ感染全体の45%を締めているというシンガポール。
そのシンガポールの統計では、なんと
「検査陽性者のうち99.8 %が軽症・無症状」
とのこと。
もちろん、ここまで軽症・無症状が多いのでシンガポール政府は感染対策の強化はしないそうです。
アメリカもそう。アメリカではすでにコロナ感染者のうち7割がBA.4とBA.5に置き換わっているそうですが、下図の通り「感染者数」も「死亡者数」もそんなに変化はありません。
もちろん、アメリカ政府が変異株BA.5を警戒してコロナ感染対策を強化する…なんて言う動きは全くありません。
そうなのです。BA.4 が来ようが、BA.5 が来ようが、オミクロン以降の世界各国は感染者数の増減にも関わらず、マスク規制などの感染対策を緩めているのです。
こちらは数日前の日本テレビ「スッキリ」で特集していた先進各国のコロナ対策の様子です。
以上をまとめるとこうなります。
- ハムスターで実験したところ、BA.5は重症化しそうだった。
- でも実際に流行っている国では「軽症・無症状」がほとんどだった。
- 事実、欧米各国は感染対策・行動規制をほぼ解除している。
そう。実は、実験室で行われた実験結果は、あくまでも実験室の中での話であり、それが実際の人間社会で起こるか?という、それは全く別の話なのです。
こうした実験室レベルの報道に触れて、恐怖や不安などの心の動きを感じた時は、一旦冷静になって慌てずに
「統計を見てましょう。」
そこには、また別の世界が広がっていのですから。
ちなみに、コロナの重症数に関して、国の発表はあてになりません。
というのも、これは僕もびっくりしたのですが、国立感染症研究所がたまたま広島の重症症例を調査したら、そのうち7割が軽症だったそうですから…。空いてる病床はなるべく埋めといたほうが報酬がもらえて病院経営にとっては良いからでしょうね。各病院から報告される重症病床使用率はかなり水増しされている可能性があります。
で、最も参考になるのがこちらのECMOネット。
ECMOは、患者さんの体への侵襲性も高く、また稼働に人手もかかるので、本当に重症にならないとなかなか使えない装置です。
上記広島県の例のように「軽症だけどなんとなく心配な症例」とか「重症例に付き添っている軽症例」にはとてもとても使えないものなんですね。
で、今現在のECMO使用状況がこちら。
日本全国では、2149件もECMO受け入れ可能なのに、実際に稼働しているのは30件だけ。1千400万都市の東京都に至ってはゼロ件です。
はい、僕が何を言いたいのか…もうお察しのとおりです。
実験室から発せられる「重症化の可能性」みたいな「あやふやな情報」ではなく、実際に社会で起こっている「信用できる統計情報」を見ていきたいものですね。