羽生結弦さんは、スター性と実力を兼ね備えた稀有な存在

NHKより

フィギュアスケートの羽生結弦選手が記者会見で現役引退を発表しました。オリンピックで2回連続金メダルという輝かしい実績を残しただけではなく、そのスター性からたくさんの熱狂的なファンを生み出しました。

スポーツ選手の中には、突出した人気で知られるスター選手がいます。

私の世代が熱中したプロ野球でいえば、西武ライオンズに入団した清原選手です。卓越した人気選手ではありますが、同じくらいの活躍をしても彼ほどの人気のない選手もたくさんいます。

清原選手は記録ではなく、記憶に残る男と呼ばれました。成績だけでは測れないスター性を持っているのです。

薬物に手を出したのは残念でしたが、その現役時代との落差のある生き様が、またファンの共感を呼んだ面もあると感じます。

同じプロ野球では、平成の怪物と呼ばれた松坂選手も、同様の人気を誇ります。選手生活の晩年は、必ずしも満足できる結果が出せたとはいえません、でも、それさえもファンの心を揺さぶるのは、清原選手と似ています。

女子フィギュアスケートなら浅田真央さん、卓球なら福原愛さんというように、それぞれの世界にファンを魅力するスターがいるのです。

実力だけなら、他にも素晴らしい選手はたくさんいます。なぜ、彼らは特別な存在になったのでしょうか?

共通するのは、感情に訴えかけるドラマ性のある生き様と、親しまれ憧れの対象となるようなキャラクターではないかと思います。

華やかな選手生活のように見えて、必ずしも順風満帆ではなく、思い通りにいかない挫折があって、その中で懸命に努力を続けている。それが実を結ばなくても、ひたむきな姿勢が人を感動させ、応援したくなる。そんな完璧ではないところにこそ、人間らしさを感じて共感してしまうのです。

そして、明るく人懐っこいキャラクターも共通しています。見ているだけで元気をもらえ、周囲に人を集めるスター性につながるのです。これは生まれつきの才能としか言いようがありません。

かつて島田紳助さんが明石家さんまさんの明るいキャラクターを目の当たりにして「こいつには勝てない」と司会業を目指すことにしたという話を思い出します。

実力や成績では圧倒的な結果を出していても、誰にも知られるような人気スター選手になれるとは限りません。

羽生選手が卓越しているのは、スターとしての人気だけではなく、実力も桁外れというところです。

現在の日本のスポーツ界では、並び立つことができるのは、大リーグの大谷翔平選手くらいではないでしょうか?日本スポーツ界の宝ともいえる存在です。

今回の引退は自分なりの挑戦を続けるための決断ということで、次のステージで何をやろうとしているのか?そんな期待感を、フィギュアスケートにそれほどの興味を持たない私にも持たせ続ける。そんな存在感こそ、まさにスターの証です。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2022年7月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。