統一教会とTKO木本氏7億円投資トラブルの共通点

99%の人はおかしいと思っています。統一教会へのお布施や怪しい投資話のことです。

しかし、小銭を持っている人たちはその小銭を大銭にしたい、あるいはその小銭を価値あるものにしたいと考えます。これは人間の性です。これを「種銭」と言います。種がなければ芽は生えぬ、ですから。

ではなぜそれでも数多くの人がお金にまつわりるトラブルに巻き込まれるのでしょうか?

(イメージ)先の見えない時代に人びとはなににすがる? recep-bg/iStock

個人的には2つに大別できると思います。一つはもっと稼ぎたい、一つは正常な判断ができない中での自分や家族を救いたい気持ちです。

前者が今回、話題になっているTKOの木本氏の投資話に乗った数多くの人たちに見られるタイプです。この手の投資詐欺の話は歴史をさかのぼれば無数に出てきます。騙されたという方は皆さんの周りにも結構いるはずです。もう一つは統一教会に限らず、新興宗教やカルト集団にお布施をして自分や家族に幸せがやってくると信じてしまうケースです。個人的にはオレオレ詐欺も全く同じではありませんが、人の心を揺さぶり、お金を巻き上げるという点では似ていると思います。

私の知る人が投資詐欺に引っかかりました。その手口は友人に誘われてセミナーに行くところから始まります。そのセミナーでしゃべる人が巧みなトーク技術で参加者の一部を「その気」にさせます。人の心理は伝播します。ある人が「素晴らしい」「ぜひ一口!」といえば俺も、私も、と続きます。ところが人の心の隙間はそう簡単に引き出せるものではなく、「そんなのウソに決まっている」「その証拠を見せろ!」と食って掛かってくる輩もいます。その投資セミナーでもその食って掛かる人たちを別室に移し、そこでお引き取り願ったようです。晴れて「ふるい」にかけられ、より純度が高くなったグループに残り、自分たちは選ばれた人だと思う一方、騙す側は一気呵成に口説きます。

ここからは赤子の手をひねるようなものです。人の心が「欲望の悪魔」に乗っ取られるのです。もう一つ重要なのは「考える時間を与えない」のです。その場で決めさせます。なぜなら独特の雰囲気を醸し出す興奮の渦に自分がいることがキーなので一晩考える、にさせないのです。クーリングオフがあるだろう、と言うのは素人でそんなことをうまい手口でかわすのが彼らの常套手段です。

ところで騙す側にすればその相手に「自由になる小金があるのか」です。小金はいくらか、といえば数十万円のへそくりかもしれないし、家族の財産の数百万円かもしれない、今回の木本氏の投資話の件では3000万円も騙された芸能人もいるようです。ただ、不思議なのは余力あるお金だけではなく、全財産を突っ込むケースがしばしばみられることです。これでは馬券の1点買いのようなものです。もう無茶苦茶。でもその時は気がつかないわけです。

日本でこの手の詐欺が横行しやすい理由はお金の教育が十分ではないからとされています。それは少なからずともある程度は正しいと思います。お金はどうやったら儲かるのか、その仕組みやどれぐらい儲かるかは例えば、自営業者、会社経営者、投資家は肌身を持って知っています。しかしながら9割の人はビジネスや投資で何%儲かるのか知らないといっても過言ではないでしょう。例えばあなたがお勤めの会社はいくら儲けていますか、と聞けば上場会社勤務でも知らない人が多く、非上場ならほとんど誰も知りません。役所勤めの人は儲けるという概念すらありません。

そうなると銀行に預けても振込手数料にもならない金利を稼ぐより、10%、20%と聞けば心が躍ります。同じ仕組みはアパートのオーナーになり、借り上げ、サブリースの仕組みで20年家賃保証というのと同じです。数千万円から億近いお金の投資で老後はずっと安泰ぐらいの響きになります。そんなこと、「あるわけない!」のです。だけどそれがあるわけないということ自体がわからないのです。

宗教にはまる人もそうだと思います。お布施をすれば自分が幸せになれるという話が私には理解できないのです。なぜ、高額なツボや印鑑入れを購入すると幸福がやってくるのでしょうか?それならまだ風水の方が説得力があります。これも集団心理に催眠術にかかったようなものなのでしょう。

人は弱いものです。勧善懲悪のドラマがヒットするのはスカッとするから、と言いますが、それは自分が普段ストレスやもやもやすることがあるからだということの裏返しだとも言えます。オレオレ詐欺も長く会っていない自分の子供、特にそれは娘ではなく、息子である点が重要です。娘は母親と非常に密接につながっているケースが多いので騙せないのです。ところが放蕩息子という言葉があるように何年も会っていない、普段、電話もしない息子が「母ちゃん、ちょっと俺…」と言われたら声を聞いた瞬間に嬉しさと心配で平静心を失うのです。

これを防ぐ方法はあるでしょう。マネーに関しては教育をすることがベストです。そして巨額の利益を得た投資話や「億り人」という言葉が独り歩きしないようにすることです。オレオレ詐欺や宗教話は心の隙間に入り込む害虫のようなものです。それを防ぐには家族がコミュニケーションをとることでしょう。「全国の息子達よ、お母んに月一回でもいいので近況報告の電話をしてあげよう!」。これだけでオレオレ詐欺の成功率は極端に下がるはずです。警察もお年寄りに詐欺に引っかからないようにしましょう、というのではなく、親に電話しようキャンペーンをなぜ張らないのか、不思議でなりません。発想の転換ですね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2022年7月24日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。