「体育会系歓迎」という組織に気をつけよ

「体育会系の人材は根性があって礼儀も正しいし、人材としては最高だよね」

「いやいや、体育会出身のヤツらは目上におべっか使ってるだけだし、自分の頭で考える力が無いからダメだよ」

いわゆる“体育会系人材”が優秀か否かについては賛否両論があります。

筆者個人としては、体育会系人材だからというだけでは、

「優秀か、優秀でないか」
「メンタルが強いか、繊細か」
「自分の頭で考えるタイプか、目上に従うタイプか」

といった要素は判断できず、実際に話してみないと分からないと考えています。

というのも、これまで出会ってきた体育会系出身者たちを振り返ってみると、「打たれ強いタイプ」と「打たれ弱いタイプ」はほぼ同じぐらいの割合だったと感じています。

また、「自分の頭で考えるタイプ」と「目上に追従するタイプ」の割合についても、非体育会系出身者と比べてあまり変わらないように思います。

一般的に考えられているのとは異なり、「体育会での経験によって人格が大きく変わる」ということはほとんどないのではないでしょうか?

つまり、「打たれ強い人」は体育会入部以前からメンタルが強く、また「目上の人に盲従するタイプの人」も体育会入部以前からそのような性格であるはずです。

性格の傾向というのは、幼少期から高校生になる年齢までにほぼ決定しており、思春期も後半にあたる18歳以降の時期には、人格の土台は大体固まっているはずです。

このように、“体育会系出身者”について、その傾向を論じることはあまり意味がないと考えています。

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一方で、体育会系人材を好む組織には明らかな特徴があります。

すなわち、体育会系出身者を重視する組織は「極端な上位下達」の傾向があり、いわゆる“ブラック企業”が多いと実感しています。

体育会系人材は“従順な犬”とみなされている

“体育会系歓迎”の会社の多くが口を揃えて言っているのが、「体育会系のヤツらは“上下関係”をわきまえていて、理不尽に耐えられるからイイね」というものです。

この“理不尽への耐性”という資質について、ブラック企業の間では「心身の強さ」や「コミュニケーション能力」といった要素以上に重視されていたりします。

というのも、ただ単に体力や精神力が強い人材を求めているのであれば、なにも体育会という特殊な組織に限らず、「スポーツをやっていた人材全般」が優遇の対象になるはずだからです。

それでも体育会系人材だけが優遇の対象となるのは、“体を鍛えている”という要素以上に、

「絶対的な上下関係の中で、理不尽な仕打ちに慣れてきた」という性質が着目されているからにほかなりません。

それはつまり、「絶対的な上下関係が存在する組織であること」や、「理不尽を押し付けなければならない事情を抱えた組織であること」の裏返しでもあります。

「理不尽を放置せず、きちんと解決に取り組むホワイトな組織」であれば、そもそも「理不尽への耐性がある人材」など必要としないはずです。

ところで、体育会出身の人材に限らず、社会人の中には一定数、「目上の者が間違ったことをやっていても批判せず、盲目的に服従してしまう」タイプの人が存在します。

このような「目上に盲従する」タイプの人材の言動を観察していると、必ずしも上司や年長者に対してのみ追従しているわけではなく、実は同じ立場の同期の中でも、常に多数派の側につく傾向があります。

つまり彼(女)らは、けっして「礼儀正しさ」から目上の人たちを重んじているわけではなく、むしろ「長い物には巻かれておけ」という“保身”と“自律心の欠如”が根底にあります。

一部の企業が好む「上下関係を重視する人材」「理不尽に耐える人材」というのは、上記のような欠陥や問題点を抱えていることが多いので、本来このような人材を大量に抱えることは組織にとって弊害となります。

それでもなお「理不尽に耐えられる人材を求める」組織というのは、相当深刻な“歪み”を抱えている可能性が極めて高いと考えるべきでしょう。

大変極端な例ですが、“上下関係の徹底”や“理不尽への忍従”を要求する人材を好む組織の典型的な例として「暴力団」があげられます。

暴力団というのは、しばしば組織の構成員を消耗品のように使い、構成員の人生を犠牲にしてでも組織の体面を保とうとします(なぜか任侠物など一部のフィクションの世界では、人情に厚い組織のように描かれたりしますが、実態は真逆です)。

暴力団まではいかずとも、“上下関係の徹底”や“理不尽への忍従”を求める組織というのは特有の内部事情があり、下っ端のメンバーに対して自己犠牲を強いる傾向があるので、注意が必要です。

“体育会系歓迎”という組織に警戒せよ

ここまで述べてきたように「体育会系の人材が欲しい」という会社や組織に対しては、基本的に警戒感を持つべきだと考えます。

(ただし、純粋に「体力や根性のある人材が欲しい」「礼儀正しい人と一緒に働きたい」という目的で優先採用しているのであれば、この限りではありません)

従業員に理不尽への忍従を強いる会社に関わると、そこで社員として働く立場にせよ、客として関わる立場にせよ、ろくでもないことに巻き込まれる可能性が高いと考えるべきです。

もし、何らかの事情で“体育会系歓迎”の企業と関わることになった場合には、まずは、

「なぜ御社は体育会系の人材が欲しいのですか?」

と尋ねてみたうえで、どのような答えが返ってくるのかを確かめてみる必要があります。

「ウチは体力があってハキハキしてる人材が好きなんだよ」という答えが返ってくるならばまだ良いのですが、もし万が一、「理不尽への耐性」とか「上下関係」とかいうワードが出てきた場合、その組織に対しては深入りせず、距離を置いたほうが無難でしょう。