七養ということ

私は郷学研修所・安岡正篤記念館(@noushikyogaku)さんをフォローし、そのツイートを見ていますが、その中にあった『格言聯璧:かくげんれんぺき』にある次の「七養:しちよう」を一週間程前リツイートしておきました。

時令に順(したご)うて以て元気を養ふ。思慮を少うして以て心気を養ふ。

言語を省いて以て神気を養ふ。肉慾を寡(すくの)うして以て腎気を養ふ。

嗔怒(しんど)を戒めて以て肝気を養ふ。滋味を薄うして以て胃気を養ふ。

多く史を読みて以て胆気を養ふ。

安岡先生の『百朝集』によれば、元気は「身心一如の原始的創造力」、心気は「その内奥の心理的な力」、神気は「その更に奥深い霊的なもの」であります。先ず時令とは「季節・時候の意」、食事で考えれば一番栄養価が高い旬のものを食べて元気を養うということです。

次に「言語を省いて以て神気を養ふ」で言うと、私は本年5月このフェイスブックで行った投稿の中で次のように述べました――森信三先生によると、「人間のたしなみというものは、言葉を慎むところから始まるもの」とのことです。之は先生に限らず、例えば良寛でも90条以上の「戒語」を残しており、言葉を慎むということを非常に大事にしていたようです。

兎に角ぺらぺらと喋り続ける人というのは、基本考えずに喋っており浅薄に感じられる場合が多いです。人間にとって言葉が最大の意思表示の手段になり得るわけですから、我々は不必要な言葉を発さぬよう熟慮の上ものを言わねばなりません。

また「飲食女色は腎を弱め、嗔怒(いかり)は肝を傷(いた)め、脂っこいような食物は胃に悪い。古今の治乱興亡に通じることは胆気を養って度胸を造る」とのことです。特に年を取ってから性欲で振り回されますと碌なことにならず、それはきちっと抑えて行かねばなりません。

最後に「思慮を少うして以て心気を養ふ」ですが、思慮というのはずっと少なくするのではなくて、メリハリが求められるのだろうと思います。時に自分の心を一遍空にして再度考えてみることが大事です。

例えば座禅を組み瞑想をすると、活力(心気)が養われます。別の言い方をすれば、「寧静致遠:ねいせいちえん…落ち着いてゆったりした静かな気持ちでいなければ遠大な境地に到達できない」ということです。瞑想が世界中で称賛される所以もここにありましょう。「黙養:もくよう」という言葉もある通り、黙することで心気も神気も養われるのです。


編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2022年8月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。